第一章 第三十六話|霧深き夜に見た繊月


ユウキは、いつも通り朝一番で自社のWebサイトの検索順位をチェックしていた。彼にとって、これは毎日のルーティンであり、自身の敏腕ぶりを確認する儀式のようなものだ。キーワードは「地域名 工務店」や「注文住宅 地域名」といった、まさに自社の得意分野を示すもの。これまで、彼らのサイトは常に上位を独占し、たまに現れる新規参入の小さな工務店は、すぐに姿を消していった。彼らにとって、Webは完全に支配下の領域だった。

だが、今日の検索結果は、ユウキの眉をひそめさせた。

「……なんだ、これ?」

いつもの上位表示の中に、見慣れないサイトの名前が食い込んでいる。しかも、その順位が、じりじりと、しかし確実に上がってきているのだ。最初はせいぜい3ページ目、4ページ目あたりをうろついていたはず。それが今や、2ページ目の上の方に顔を出し、いくつかの主要キーワードでは1ページ目の下位にまで食い込んできている。

そのサイトの名は、健太の工務店。

「あの素人集団が……? まさか」

ユウキは、不快感を露わにした。健太の工務店といえば、かつてWebサイトのリニューアルを提案した際、ユウキが半ば見下した態度で接した相手だ。あの時は、素人臭いホームページで、到底自分たちの競合にはなり得ないと思っていた。だが、現状は違う。彼らのサイトは、以前とは比べ物にならないほど情報が整理され、専門性が高く、訪問者の疑問に答えるような内容が充実している。それは、プロの目から見ても、手抜きのない作り込みだった。

「チッ……。一体、バックに誰がいるんだ?」

ユウキの顔に、怒りと焦りが混じり始めた。健太のような、Webの知識など無いに等しかったはずの男が、これほど短期間で検索順位を上げてくるなど、独力でできる芸当ではない。必ず裏で糸を引いている者がいるはずだ。その存在が、ユウキの苛立ちを一層募らせた。

彼にとって、Webからの集客は自社の生命線だ。長年かけて築き上げてきたWeb上の優位性が、突如現れた小さな工務店によって脅かされている。ユウキの指が、イライラとマウスを叩いた。これまで眼中になかった存在が、突如として目の前に立ちはだかる手強い競合として登場してきたことに、彼は隠しきれない焦燥感を覚えていた。

晴れ間に広がる上弦の月

あの日、一平の顔を見て、俺は心の底から救われた。工務店が傾きかけ、家族にも笑顔が消えかかっていたあの頃。まるで濃い霧の中に閉ざされ、進むべき道も見えないような、そんな日々だった。

父から受け継いだ工務店は、長い歴史を持つとはいえ、Web集客に関しては完全に時代遅れだった。数年前に作ったホームページは情報が古く、問い合わせフォームはスパムだらけ。以前、他の業者に相談して簡単なWeb広告も試してみたが、効果は一時的で、すぐに予算ばかりが溶けていった。

そんな状況で、俺は家族にまで当たってしまうこともあった。美咲は黙って耐え、ひまりは俺の顔色をうかがうようになっていた。

あの頃の俺たちの前には、常に重く立ち込める霧があり、空を見上げても細い月の光がかろうじて届く程度だった。 希望はかすかで、不安だけが心を支配していたんだ。希望の光は細く、頼りなく、いつ消えてもおかしくないように感じていた。

そんな俺を救ってくれたのが、中学時代からの親友、一平だった。最初は彼のWebマーケティングの話が専門的すぎて、正直、ついていけない部分もあった。だが、彼の言葉はいつも本質を突いていた。

「健太、Web集客は、ただホームページを作るだけじゃない。それは、お客さんの課題を見つけて、それを解決してやる営業活動そのものだ」

一平は、俺にWordPressサイトの重要性を説き、コンテンツの力を教えてくれた。リファラースパムとの格闘。美咲が協力してくれたInstagramの運用。そして、バリアフリー改修に特化したLPと、限定的なリスティング広告。一つ一つの積み重ねが、やがて確かな成果となって現れた。

最初の1件の受注は、本当に嬉しかった。Webからの問い合わせ、そして契約。たった1件、されど1件。それは、Web集客が絵空事ではない、現実の力を持つことを俺に教えてくれた。

その後、WordPressサイトのコンテンツが充実し、「地域名 工務店」といった主要キーワードでの検索順位がぐんぐん上がっていった。Instagramのフォロワーも増え、美咲の投稿がきっかけで店に直接来てくれるお客さんまで現れた。

Web集客の土台が整っていくにつれて、工務店に活気が戻り、それに伴い、俺の心にも余裕が生まれた。食卓での会話が増え、美咲もひまりも、以前のように屈託のない笑顔を見せてくれるようになった。ひまりが嬉しそうに幼稚園での出来事を話すのを聞きながら、俺は本当にこの変化を実感していた。

俺たちはまだ道の途中にいる。競合がこの変化に気づき、動き出すのは時間の問題だろう。だが、もうあの時の「霧深き夜」ではない。Webという確かな羅針盤と、一平という心強い相棒がいる。そして何より、再び笑顔を取り戻した家族の存在が、俺の背中を力強く押してくれる。

俺たちの未来には、もう厚い雲はなく、夜空には柔らかな光を放つ上弦の月が、しっかりと道を照らしている。 希望に満ちた穏やかな光景が、そこには広がっていた。

第一章 完

第一章 第三十五話|霧深き夜に見た繊月

霧深き夜に見た繊月 ― 小さな会社の起死回生 低予算からのWeb集客戦略(目次)


著者・監修 : 株式会社ファンフェアファンファーレ

2012年創業の京都のWeb制作会社 ホームページ制作やSEO、Web集客・Webマーケティングをメインテーマにお届け。SEOやAI活用、Web以外の集客何でも来いです。中小零細企業を中心に「きちんとしたホームページ集客」を考えて、ホームページ制作や様々なWeb集客戦略を提案しています。 ホームページ制作に限ると、のべ制作数は160社(少ないって?それはそれだけ1社あたりのWeb集客施策や修正に集中してるからさ)

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