高層ビルのオフィスで、ユウキはパソコンの画面を食い入るように見ていた。そこには、健太の新しいWordPressサイトが表示されている。以前のサブスクのホームページとは比べ物にならないほど、洗練されたデザインだ。
「ほう……。なかなかやるじゃないか、健太」
ユウキは、口元に薄い笑みを浮かべた。LP運用で利益を出し、その資金で本格的なホームページを構築した。着実に、そして確実に、健太はWeb集客の階段を上り始めている。
「だが、遅いんだよ、健太」
ユウキは、振り返って社員たちに声をかけた。
「皆、聞け。競合が動き出している。我々も、さらにギアを上げるぞ。コンテンツの増強だ! ブログ記事の投稿頻度を上げる。YouTubeの動画も、もっと企画を練り、質を高めていく。この地域のトップを走り続けるために、一切の妥協は許さない」
社員たちは、ユウキの言葉に気合を入れて頷いた。彼らの顔には、この激しいWebの世界を生き抜いてきた者たちの、確かな覚悟が宿っている。
その頃、健太の事務所では……。
俺は、一平に教えてもらったGoogle Analyticsの画面を食い入るように見ていた。コンテンツ配信をやり始めてから、わずか数週間。サイトへのアクセス数が、信じられないような勢いで伸びているのだ。グラフは右肩上がりで、日を追うごとにその傾斜は急になっている。
「すごい! 一平! 見てくれよ、このアクセス数!」
オンライン会議で、俺は興奮を隠しきれないまま、画面共有でGoogle Analyticsのデータを見せた。
一平は、俺の興奮とは裏腹に、冷静な表情で画面を見ていた。
「ふむ……。確かに伸びているな。だが、健太、残念ながら、これは喜んでばかりはいられないな」
一平の言葉に、俺の胸は一気に冷えた。
「え? どういうことだ?」
「このアクセス数の多くは、『リファラースパム』によるものだ。お前が作ったコンテンツを評価してアクセスしてきているわけじゃない。迷惑行為の一種で、サイトへのアクセスを装って、自社のサイトに誘導しようとするものだ」
俺は、頭が真っ白になった。せっかくのアクセス数の伸びが、まさかそんなものだったとは。糠喜びだった。
「そんな……。じゃあ、どうすればいいんだ?」
「Analyticsの設定で、スパムからのアクセスを除外することができる。俺の方で設定しておくから、安心してくれ。本当に意味のあるアクセスを計測できるようにする。これも、Web集客ではよくあることなんだ。一つ一つ、対処していけばいい」
一平は、淡々とそう説明し、すぐにAnalyticsの画面で除外設定の作業を進めてくれた。俺は、がっかりしつつも、また一つWeb集客の知識が増えたことに気づいた。
そして、どんな困難にぶつかっても、一平が冷静に、そして的確に解決策を示してくれることに、改めて感謝の気持ちが湧いた。Web集客の道は、まさに泥沼だ。だが、それでも俺は、一平と共に歩み続けると心に誓った。
霧深き夜に見た繊月 ― 小さな会社の起死回生 低予算からのWeb集客戦略(目次)
参考