しばらくして、一平が俺の事務所にふらりと遊びに来た。オンラインでのやり取りばかりだったから、顔を合わせるのはずいぶん久しぶりだ。
「よお、健太。調子はどうだ?」
一平は、変わらない飄々とした態度で、事務所を見回した。以前の重苦しい雰囲気は薄れ、どこか活気が戻ってきたように感じる。これも、LPからの受注が増え始めたおかげだろう。
「おかげさまで、なんとかやってるよ。これも全部、お前のおかげだ」
俺は、素直に礼を言った。実際に、LPからの問い合わせは着実に増え、小さな仕事だが確実に利益を生み出している。広告費を倍に増やしてからも、その効果は継続していた。
「そうか。それは良かった。で、次のステップなんだが、どうする?」
一平は、本題に入ってきた。俺も、このところずっと考えていたことだ。
「あのLPのおかげで、少しずつだが利益が出てきてる。このままいけば、本格的なホームページのリニューアル予算を確保できる道筋が見えてきたんだ」
俺がそう言うと、一平は満足げに頷いた。
「よし。であれば、もうあのサブスクのホームページは解約していい頃合いだ。あれでは、お前が本当に伝えたいことを伝えるには限界がある。今こそ、Web集客の土台となるホームページを本格的に作る時だ」
俺は、一平の言葉を待っていた。これまで、予算の都合で踏み切れなかったが、今ならできる。
「こう言っちゃ何だがな、あのサブスクホームページは、確かに中の設定はしてくれるが、実態として単に大手のホームページ作成サービスを横流ししただけのものなんだ。あれを改良しても何にもならない。それにページを追加するのも高いだろ?」
「そうなのか!まあ確かに前の見積もりでえらい額を提示されたし、あそこを続ける気はないよ」
「あまり言うのも何だったからな。言い方は悪いがあれは素人騙しに近い。だからこれから本格的なホームページにリニューアルするのがいい」
「ああ、ぜひそうしたい。だが、また業者を探すのか? 正直、またあの手間を考えると……」
俺がそう言いかけると、一平は俺の言葉を遮るように言った。
「心配するな、健太。今回は、俺が引き受けよう」
俺は、耳を疑った。一平が、俺のホームページ制作を引き受けてくれる? LP制作の時は、「自分で考えろ」と突き放したくせに。
「え、お前が? でも、前に…」
「あの時は、お前自身に考えさせる必要があった。だが、もうお前は十分自分で考えられるようになった。それに、ここから先は、より専門的な知識と技術が必要になる。お前の工務店の本当の魅力を最大限に引き出すためには、俺が直接手を入れるのが一番手っ取り早い」
一平は、そう言ってにやりと笑った。その顔には、確かな自信が漲っていた。
「そして何より、俺はお前の工務店を、あのユウキの工務店よりも上に引き上げたいと思ってるからな」
一平の口から、ライバルであるユウキの名前が出たことに、俺は驚いた。普段、そんなことを口にする奴じゃない。
「あの野郎には、負けたくねえだろ?」
一平の言葉は、俺の胸に熱い火を灯した。そうだ。俺は、あのユウキには負けたくない。親父の代から続くこの工務店を、俺の代で終わらせるわけにはいかない。
「ああ! 頼む、一平!」
俺は、力強く頷いた。こうして、俺の工務店のWeb集客の新たな段階が始まった。一平という強力な「軍師」を得て、俺はこれまで以上に戦う覚悟を決めた。