休日の昼下がり、健太の工務店の事務所に、美咲のママ友である真紀が訪ねてきた。普段は幼稚園の送り迎えで美咲と顔を合わせる程度だが、こうして真紀が直接事務所に来るのは珍しいことだ。彼女の表情には、どこか不安と期待が入り混じっていた。
「健太さん、お忙しいところすみません。美咲さんからお話聞いて、ちょっと相談に伺いたくて」
真紀は申し訳なさそうに切り出した。手には、スマートフォンの画面を写したらしいプリントアウトが握られている。
「この間、美咲さんからGoogleマップのMEOの話を聞いて、自分なりにビジネスプロフィールってやつを設定してみたんですけど、これでいいのか全然わからなくて……。もしよろしければ、健太さんに一度確認していただけないでしょうか?」
そう言って差し出されたプリントアウトには、「まごころ弁当」のGoogleビジネスプロフィールらしき情報が映っていた。写真や営業時間、簡単な説明文などが記載されている。真紀が自力で頑張ったのだろう。
「もちろんです。どうぞ、こちらへ」
健太は真紀を応接スペースに案内し、受け取ったプリントアウトに目を通した。彼の工務店も、つい最近までWeb集客で苦戦していた身だ。一平のアドバイスがなければ、今頃どうなっていたか分からない。だからこそ、真紀の気持ちが痛いほどよく理解できた。
「ありがとうございます。私たちも、Web集客にはすごく興味があるんです。でも、正直なところ、専門業者に頼むほどの予算は全く捻出できなくて……。だから、自分たちでできる方法を色々と模索しているんです。Instagramの集客も、その一つで……」
真紀は、経営の厳しさをにじませながら話した。健太はプリントアウトを確認しながら、彼女の言葉に耳を傾ける。彼女の弁当店と同じように、自分の工務店も以前は予算の壁にぶつかり、手探りでWeb集客を試みていた時期があった。
健太は、一通り真紀が設定したビジネスプロフィールを確認し終えると、顔を上げた。
「真紀さん、拝見しました。ご自身でここまでやられたのは素晴らしいですよ。すごく丁寧に情報が入力されています」
真紀の顔に、安堵の表情が浮かぶ。
「ありがとうございます……。でも、これで効果があるのかどうか」
「ええ、そこですよね。うちも以前、Web集客で本当に苦労していて、今は友人にアドバイスをもらいながら、少しずつ改善しているところなんです。その友人は、Webマーケティングの専門家として独立しているんです」
健太は、一平のことを思い浮かべながら続けた。
「彼の話だと、Googleビジネスプロフィールは、いわゆるMEOって呼ばれるものの一部なんです。これは、Googleマップで地域のお店を探している人に、自分のお店を見つけてもらいやすくするための対策で、すごく重要なんです」
健太は、自分が一平から受けたアドバイスを思い出しながら、できる限り分かりやすくMEOの概要を説明した。
「うちの工務店も、このMEOとホームページを連動させることで、ようやく問い合わせが増えてきたところなんです。具体的には、お店の正確な情報を載せるのはもちろん、写真をもっと充実させたり、お客さんからの口コミを増やしたり、定期的に新しい情報を投稿したりすることが大事だと教えてもらいました。真紀さんがやってくれた設定は、まさにその第一歩として、とても良いですよ」
健太は、真紀が自力で取り組んだ努力を労い、彼女の行動が正しい方向に向かっていることを伝えた。真紀の顔には、まだ不安の色は残っていたが、それでもかすかな希望の光が灯ったように見えた。







