健太と真紀が事務所で話し込んでいる間、健太の自宅では美咲が二人の娘の面倒を見ていた。真紀の娘、あかねと、健太の娘、ひまり。二人はリビングで、それぞれのおもちゃを持ち寄って楽しそうに遊んでいる。
ブロックを積み上げたり、絵本を広げたり、時には小さな声で言い争いながらも、すぐに仲直りして笑い合う声が事務所にまで聞こえてくるようだった。
美咲はそんな子供たちの様子を穏やかな笑顔で見守りながら、時折、二人が散らかしたおもちゃを片付けたり、飲み物を差し出したりしていた。
事務所では、健太が真紀の質問に丁寧に答えていた。
「健太さん、今日伺ったお話、本当に参考になりました。ホームページのこと、MEOのこと、そしてInstagramでの発信の仕方や、うちの『強み』をどう見せるか……。一度、夫としっかり相談してみます」
真紀は、健太の話を聞き終えると、深い感謝の念を込めて言った。彼女の表情には、来た時のような不安の色は薄れ、代わりに明確な目的意識と、かすかな希望の光が宿っていた。
「いえいえ、僕も一平から教わったことをお伝えしただけですから。少しでもお力になれたなら嬉しいです」
健太はそう言って微笑んだ。
真紀は深々と頭を下げ、「本当にありがとうございました!」と感謝の言葉を述べ、事務所を後にした。健太は彼女を見送ると、再び事務所の椅子に座り、真紀の弁当店の未来について考えを巡らせていた。
真紀は事務所を出ると、健太宅の玄関へ向かった。中に入ると、美咲が笑顔で迎えてくれた。
「美咲さん、今日は本当にありがとう。助かりました」
「ううん、全然! ひまりもあかねちゃんが来てくれて、すごく楽しそうだったわよ」
子供たちはまだ遊び足りない様子だったが、真紀はあかねの手を引き、美咲に改めて礼を言うと、娘を連れて家路についた。その足取りは、来た時よりもずっと軽やかだった。







