健太の説明に、真紀は少し希望を見出したようだったが、すぐに次の疑問が浮かんだ。
「あの、健太さん。やっぱり、私たちもちゃんとしたホームページは用意した方がいいんでしょうか? 一平さんの会社サイトを見たら、すごく綺麗で立派でしたけど、うちにはとてもじゃないけど、あそこまで予算は出せなくて……」
真紀の問いに、健太は少し考えた。自分もかつて予算の壁にぶつかり、高額なホームページ制作に尻込みした経験がある。
「そうですね……。もし、今すぐまとまった予算を捻出するのが難しいのであれば、急いで本格的なホームページを用意する必要はないかもしれません」
健太は、一平から聞いたアドバイスを思い出しながら答えた。
「もちろん、最終的にはあった方が良いのは間違いないです。でも、一平がいつも言っているのは、ホームページはあくまで『営業ツール』であって、それ自体が目的じゃないってことなんです。それよりも、今の真紀さんの状況やお店の特長を考えると、他に先に取り組んだ方が、もっと効果的な集客方法があるかもしれません」
真紀は、不安げに健太を見つめた。
「他に、ですか? 私たち、Instagramと、あと、最近ちょっとMEOをいじり始めたくらいで……。これまでに何か集客のために試したこと、と言われても、正直あまり思いつかなくて」
健太は、温かい飲み物を差し出しながら、尋ねた。
「そうですよね。では、真紀さんがこれまでにお店で試した集客方法や、これは効果があったな、逆にあまりなかったな、というものがあれば教えてもらえますか? それから、ちょっと専門的な話になるんですけど、真紀さんの『まごころ弁当』ならではの『強み』って、どんなところだと思いますか?」
真紀は「強み、ですか?」と首を傾げた。
「ええ。例えば、他のお店にはない、あなたのお弁当店だけの魅力とか、お客さんが『まごころ弁当』を選ぶ、決定的な理由は何だろう、って考えてみるんです。 難しい言葉で『USP』っていうUnique Selling Propositionの略らしいんですけど、要は、お客さんの心に『ここだ!』って刺さるような、あなたのお店ならではの『売り』のことですね。それが見つかると、集客の方向性もぐっと明確になるんです」
健太は、一平が自分に何度も問いかけたのと同じように、真紀に優しく問いかけた。真紀は、腕を組み、考え込むような表情になった。自分のお店ならではの強み。浩二が作る弁当の美味しさはもちろん知っている。
でも、それをどう言葉にして、お客さんに伝えればいいのか。そして、それが本当に他のお店にはない強みなのか。彼女の頭の中で、様々な要素が巡り始めた。







