一平は、自身の事務所でPCの画面を睨んでいた。収集しているWeb検索データの中に、これまでとは異なる不穏な動きを察知したのだ。特定の業界で、突如として質の低いAI生成コンテンツが大量に投入され、検索結果の変動を巻き起こしている。いわゆるAIによるコンテンツ量産と、それによる検索流入の乱れだ。
「これは…さすがに無視できないな」
一平は独りごちた。SEOのアルゴリズムは常に変化しているが、このような大規模かつ悪質な手法は、市場全体に悪影響を及ぼす可能性がある。この状況を一人で抱え込むのではなく、異なる視点を持つ専門家の意見が必要だと直感した。
彼が連絡を取ったのは、インターネットを通じて知り合った10年来の友人、大輝(だいき)だ。大輝は一平より10歳以上年下だが、動画制作とSNS運用においては業界トップクラスのプロフェッショナルだった。ホームページ制作やSEOとは畑が異なるものの、Web集客とマーケティングの本質を深く理解している点で、一平は彼を高く評価していた。
「おう、一平さん。お久しぶりです! どうしました、こんな時間に」
電話に出た大輝の声は、相変わらず明るい。
「大輝、実はちょっと相談したいことがあってな。最近、検索の動向がおかしくてな、AIコンテンツの量産が絡んでる可能性があってな。お前のSNSの知見も聞いておきたい」
一平が簡潔に状況を説明すると、大輝はすぐにその深刻さを理解したようだった。
「なるほど、それは厄介ですね。ちょうど近々、撮影の仕事で一平さんのオフィスの近くまで行く予定があるんですよ。だったら、その翌日にでも直接お邪魔して、じっくり話しましょうか?」
大輝からの思わぬ提案に、一平は安堵した。テキストや電話だけでは伝わらないニュアンスもある。直接会って話をすることの重要性を、彼はよく知っていた。
「助かる。じゃあ、撮影の翌日で頼む。詳しい時間はまた連絡する」
電話を終えた一平は、再びPCの画面に向き直った。Webの世界は常に変化し続ける。しかし、その変化の波を乗りこなし、クライアントを導くためには、自分一人だけでなく、異なる専門性を持つ仲間との連携が不可欠だと、改めて強く感じていた。







