長期間運営している古いホームページのリニューアルについて触れていきます。
最初に弊社としてはWebデザインが古いからといってそのホームページをリニューアルする必要はないと思っています。
ただ一方で、改ざん等のセキュリティリスクやWebマーケティング効果の低下といった面で古いホームページはリニューアルした方が良いというのも事実です。また、掲載商品、サービス、価格等の情報が古く、現在は取り扱いがない情報や改定があった情報がそのままになっている場合もあります。これらは可能な限り現在の情報に修正しておいた方が良いと考えられます。
通常、古いホームページのリニューアルにまつわるコンテンツ(記事)は、リニューアルの必要性、リニューアルしないことのデメリットばかりが掲載されていると思います。
しかしながら、現状のホームページに思い入れがある場合があります。マーケティングのためにホームページを運営しているという面はありながら、そのホームページには思い出が詰まっているという場合もあります。長期間運営されている場合はその傾向があります。
そのような中
「おたくの会社のホームページは古いですね。リニューアルしませんか?」
というような営業電話がかかってきたら
「ふざけんな」
と思ってしまうこともあると思います。
「何も知らない者が勝手に判断するな」というような気持ちですね。
「思い入れのあるホームページを残したい。その一方でリニューアルの必要性もどこかで感じている」
というような場合、どのような解決策を見つければいいのでしょうか?
それは古いホームページの状態にもよりますが、「大切な何かを残し、それでいてホームページのWebマーケティング効果を高める」という方法を模索していくしかありません。
こうした面が、弊社の一番の強みかもしれません。
そこで今回は、長期間運営している古いホームページ、特に思い入れのあるホームページのリニューアルについてケースごとに事例を交えながらお伝えしていきます。
古いホームページではあるが、思い入れのあるホームページ
弊社ではホームページ修正のご依頼をよくいただきます。
その中には形式として2000年前後や2005年頃のホームページの修正も稀にご依頼いただくことがあります。
WordPressのようなCMSが主流になる前の2010年代前半以前のホームページは、静的HTMLサイトの他、独自に設計されたphpサイト、JavaScriptを駆使されたものなど、多種多様なものがあります。
「その時代にこの設計はすごいな」と思うものもたくさんあります。
「90年代末頃にhtmlのフレームではなくJavaScriptで個別にページを動的生成か、すごいな」
というような感想です。
「古いホームページですが、思い入れのあるホームページなので、変えたくないんです」
そういったお声をよくいただきます。
「うちのホームページ古いでしょ?リニューアルの提案、されないんですね。どうしてですか?」
と逆にご質問されることもあります。
ご回答としては
「それはホームページ運営の目的の軸が、『ホームページを使ったマーケティング活動』だけではない場合があるからです」
そしてこっそり教えて下さいます。
「亡くなった友人が作ってくれたんです」
「自分が独立するときに友だちと一緒に悪戦苦闘して作ったんです」
「別れてしまいましたが、当時の主人が忙しい中仕事の合間を縫って作ってくれたんです」
ホームページの表面上の表示だけを見ても、そうした背景はわかりません。
古いホームページに対する2つの考え方
そのような思い入れのあるホームページを消して、新たにリニューアルするということは、何かの思いを捨てろということになります。
ここで2つの考え方ができます。
「執着を捨てて次に進もう」
「思い出を大切にしよう」
企業がホームページを運営する場合、前者に偏りがちです。
しかし、弊社としては、両方を大切にしていただきたいと思っています。
「思い出?企業経営者が、事業主が、何を言ってるんだ」
という意見もあるでしょう。大企業ならそれで構いません。
特に中小零細企業は、事業主の思いが企業に投影されます。
もしかするとそのホームページを閲覧されるたびに
「一緒に作ったときの思い出が蘇ってきたなぁ。明日もまた頑張ろう」
と思われているかもしれません。
そんなことがあるかもしれない中,仕事を獲得したいからと「古臭いからリニューアルしましょうよ」というのは、なんだか違うなと思います。
さて、「今のホームページを消して新しくリニューアルするか、今のホームページのまま継続するか」という二元論を超えるために一段抽象化して俯瞰してみましょう。
「次に進もう」
「思い出を大切にしよう」
その2つを統合するポイントを一緒に模索していければと思っています。
ホームページリニューアルの必要性
「ホームページをリニューアルした方がいいのかどうか?」という点は、いくつかの面から検討していくことができます。
大きく分けると「セキュリティ面」と「ホームページの利用目的」です。
セキュリティ面は、ウイルス感染や個人情報流出等、ホームページ運営のリスクとなるため逃れることができません。
しかし、Webデザインが古い、ホームページのフォーマットが古い、ページ追加がしにくい等の面は、「ホームページの利用目的」によってリニューアルの必要性からは除外される場合があります。
セキュリティ面の対策必要性
セキュリティ面は、内容の改ざんやクラッキングの踏み台にされることを防ぐという大切なポイントです。静的HTMLページであるとリスクは少ないですが、phpやJavaScriptを利用したものはリスクが高まります。
端的には、古いホームページは、ウイルス感染リスクがあり、ホームページが改ざんされると、そのページにやってきたユーザーの端末(パソコン等)がウイルス感染してしまう危険性があるということです。
その他、内容が改ざんされ、スパムサイトへのリンクばかりが埋め込まれたり、リダイレクト(転送)が仕掛けれ、ウイルス感染はないものの怪しいサイトにユーザーが移動してしまうという場合もあります。
また、メールフォーム等を設置している場合でその型が古い場合、セキュリティの甘さから個人情報の流出等のリスクもあります。
さらにメールフォームの脆弱性を利用して、迷惑メールの送信に悪用されることもあります(つまり自社ホームページのサーバーから第三者に迷惑メールが送信されてしまうということになります)。
ホームページの内容改ざんは、バックアップからの復元等で対処できますが、ウイルス感染経路になってしまったり、個人情報の流出リスクがあったり、迷惑メールの踏み台にされてしまうという点は、意図せずたくさんの被害者を出してしまう他、企業そのものにとってのリスクにもなります(もちろん悪いのはスパマー・クラッカーです)。こうした点から、常に可能な限りのセキュリティ面の対策は必要となります。
ホームページの利用目的に応じたリニューアルの必要性
次にホームページの利用目的に応じたリニューアルの必要性について考えてみたいと思います。
そのホームページを利用して本格的にWebマーケティング(問い合わせ獲得等)を実施しているわけではなく、会社案内の目的でホームページ運営している場合、Webデザインが古くても、アクセスが少なくても特に問題はありません。
見る人が求める情報が掲載されているのであれば、Webデザインが古いというのは特に問題ではないと考えています。
業種によっては、ホームページのデザインが企業イメージ、店舗イメージに繋がるという場合もあるでしょうが、逆に考えると、業種によっては古いデザインでも全く問題がないということになります。
ホームページを見る人が求める情報の正確性
ただ、掲載商品、サービス、価格等の情報が古く、現在は取り扱いがない情報や改定があった情報がそのままになっている場合、可能な限り現在の情報に修正しておいた方が良いと考えられます。
また同時に、古いデザインのままである場合、見る人によっては「これはかなり古い情報かもしれない。現在も有効な情報なのだろうか?」と掲載情報の正確性に対して不安を持ってしまう場合も考えられます。
「では、そのような場合はホームページリニューアルが必要なのか?」ということになりますが、答えとしては「現在も有効で正確な情報であることさえ伝われば問題はない」ということになると考えています。
そのための工夫として、例えば「ページの最終更新日を掲載する」「価格改定日を掲載する」といった工夫をすれば良いのではないかと思います。
そのためのページ修正・情報追加といったものは必要になりますが、ホームページ自体を全面的にリニューアルする必要はないと考えています。
ホームページのWebデザイン変更はなしのままリニューアル
長期間運営されている古いホームページは、目的に合わせて「変えられるものは変える。変えたくないものは変えない」ということを実施していけばよいと考えています。
「ホームページのWebデザイン変更はなしのままリニューアル」という一見矛盾したような言葉になりますが、セキュリティ面の更新やバックグラウンドの仕組みは最新のものにして、基本デザインは同じという形でリニューアルさせていただくケースもよくあります。
一番多いのはWordPress化のご依頼です。全体をWordPress化させていただくこともありますし、基本的なデザインが変更にならないようにとメインページの下にWordPressを設置する場合もあります。
また、セキュリティ向上のためにphpバージョンを最新のものにして、新バージョンのphpでは使用できなくなった関数を削除し、一部の機能を停止させながら主要部分は稼働させるというようなケースもあります。
古いホームページはそのままで、ホームページの下層URLに新規ホームページを作るかのように「特定の製品やサービスを紹介するページ群」を入念に設置したケースもあります。
リニューアルのきっかけ
こうしたリニューアルのきっかけは、ホームページ修正のご依頼からというケースがほとんどです。
思い入れのあるホームページであるためリニューアルする予定はないとしても、どうしても部分的に変更せざるを得ないケースがあります。会社所在地の変更や、許認可番号の更新による表記の変更等がその代表例です。
また、「制作当時は自力でできたが、最新技術には対応できない」ということでご依頼いただくこともよくあります。
古いホームページを活かすためのSEO(検索エンジン最適化)
検索エンジンも進化しています。それに合わせてメタ設定や構造化データなどの仕組みも付加されていきました。
古いホームページで長期間仕様が変更されていない場合、そうした進化に合わせてどんどん他サイトとの比較で相対的に評価が下がっていきます。つまり、ホームページの価値が下がっていく場合があります。
そうなると、せっかく「思い入れのあるホームページかつWeb集客効果があるホームページ」であるのに、価値が下がり、リニューアルを脅迫されているような気分になってしまうことがあります。
こうした面を解消する方法の一つがSEO(検索エンジン最適化)です。
もちろん最新のSEOに適応したホームページの仕様にリニューアルするというのが一番良いですが、古いホームページであっても工夫次第である程度、最新のSEOに追いつくことはできます。
メタ設定(ページタイトル等)の付加による検索エンジン上の表示回数向上
極端な事例となりますが、2000年代前半頃は、SEOの概念もあまり浸透しておらず、メタ設定(ページタイトル等)も省略するケースがありました。弊社でSEO関連を修正させていただいた事例では、その年代のホームページにおいてページタイトル未設定、ディスクリプション未設定というものもちらほらあります。
メタタイトル未設定とまではいかなくても、全ページ社名のみの設定という場合もあります。
例えば「株式会社ファンフェアファンファーレ」のみの設定ということになります。
そのホームページがどのような内容のページなのかを検索エンジンはある程度予測してくれますが、はっきりと示しておくに越したことはありません。また、ページの本文が画像ばかりでテキスト(文字としての文章)が殆ど無い場合は、ページ内容がしっかりと判断されません。
これを少し改良するだけで、社名以外の検索で表示されやすくなります。
少しの改良で様々な検索キーワードで表示される可能性が広がる
それまで「株式会社ファンフェアファンファーレ」で検索したときのみ検索エンジンに表示されていたものが、様々な検索キーワードで表示される可能性が広がります。
例えば、トップページのページタイトルやページ中に大見出しを付けて
「京都のWeb制作会社 株式会社ファンフェアファンファーレ」
にすると、トップページが「京都 Web制作会社」の検索で表示される可能性が高まります。
ホームページ修正のサービス紹介ページのタイトルを
「ホームページ修正サービス|京都のWeb制作会社 株式会社ファンフェアファンファーレ」
ページ中の大見出しを
「ホームページ修正サービス」
にすると、「ホームページ修正」を含んだキーワードで表示される可能性が高まります。
なぜ、こうした設定をしたほうが良いのか?
それは、思い入れのあるホームページを価値あるものとして継続させるためです。
例えば「亡くなられたご友人」が制作されたホームページであるならば、その方とご依頼主様と弊社が肩を組んで一緒に現代を突き進むようなイメージです。
様々なタイプのリニューアル・改良をご提案しています
「今あるものを捨てないと新しい世界には飛び込めない」というのは本当でしょうか?
大企業においても、地元に本社をおいて、都市部に支店を出すという場合があると思います。
ホームページが古いからといってすべてを消して全く新しいものにリニューアルしなければならないのでしょうか?
弊社はそういうふうには考えておりません。
技術的な面、セキュリティ面、費用面等で何かしらを断念せざるを得ない部分が出てくることもあります。
ただ、「何を叶えたいか」という面をじっくりと見つめると、必ず方法が見つかっていきます。
視点を変えると方法が見つかる
視点を変えると、必ず方法はあります。
状況を俯瞰すると、「ホームページをリニューアルしたときに得れるメリット」と「今あるホームページへの思い」の両方を叶える方法が見つかると考えています。
安易な「古いホームページは競合他社に遅れを取りますよ」とか「古いままじゃ笑われますよ」などという脅しのような営業文句は嫌いです。世の中には、クラシック音楽、クラシックカーという素晴らしいものがあります(少し例えが違うかもしれません)。
もちろん先に触れた通り、セキュリティ面は対策をする必要があります。
しかしながら、思い入れのあるものを「古いので入れ替えましょう」と安易に考えるのは違うなと思います。時にどうしようもなくそうせざるを得ない場合もありますが、「このままか、それとも捨てて次に行くか」という二元論でなくても良い場合も多々あります。
「古いので新しくしませんか?」という提案の先にあるものが、「Web制作会社の用意したテンプレートにパーツを埋めていくだけ」というようなものであったり、「Webデザイナーの『自分の感性の表現をしたい』というエゴで作られていくもの」であるのならば、元のホームページへの思い入れは踏みにじられることになります。
「リニューアルのメリット」と「今あるホームページへの思い」の両方を叶える意志の方向や具体的な方法が見えてくる
新しい視点を作ると、「ホームページをリニューアルしたときに得れるメリット」と「今あるホームページへの思い」の両方を叶える意志の方向や具体的な方法が見えてきます。
もしかすると、リニューアルして「ホームページを通じてやってみたいこと」がある中、今のホームページを変えたくないという思いから、葛藤が生まれている場合もあるかもしれません。
ホームページは情報そのものです。
思いや考えが投影されます。
抵抗がある中、無理にリニューアルすると「葛藤」や「無念」がどこかに投影されます。
そうした時、「ホームページの目的」として「何を叶えたいか」をしっかりと見つめていくと、どのようなことを選んでいけば良いかが見えてきます。
「今のホームページへの思い」
「リニューアルによってもたらされる集客効果やセキュリティの向上」
できれば両方を選んでいきましょう。
古いホームページを残したままリニューアルする
ホームページの画像などのパーツと文章を再利用してWordPress化し、新しいページを別に追加していくという方法があります。
古いホームページを消さずに下層ページに移管してアーカイブ化するという方法もあります。
トップページや主要ページはそのままで、新コーナーをWordPressで設置するという方法もあります。サービスや製品の紹介に特化した別サイトを設置することもできます。
メールフォーム等セキュリティリスクのある部分だけ裏側のシステムを最新の仕様にするという対策もできます。
flashスライドショーなど、動作しなくなった部分だけ最新の方式で再構築するという修正もできます。
カラーパターンを忠実に再現したり、ソースコードの一部を再現する
単色でもWebのカラー表現は、16,777,216色あります。全く新しい形にリニューアルするにしても、メインのカラーパターンを忠実に再現して利用するという配慮をすることはできます。また、ソースコードの一部を再現することもできます。いずれの場合でも「どこかに必ず残す」ということは可能です。
極論としては、新規ホームページにリニューアルしつつ、過去のホームページはスクリーンショット画像等にして、過去のホームページの紹介ページを作って、イメージだけは残すということもできます。
「ホームページ制作の時の思い出を捨てるわけではない」と感じた時に溢れる意志
長期間運営されている古いホームページを利用されている方は、どこかでリニューアルの意図を持たれていることがほとんどです。しかし一方で、「あの時の思い出を消したくない」というものを持たれています。
様々なところでホームページリニューアルの必要性を聞かされていたり、ぼんやりとそう思ったりされています。「予算もあるし色々とやってみたい」と思いつつ、やはり変えたくないという抵抗があったりします。
もちろんホームページの利用目的により全くリニューアルの必要がない場合もあります。
ただ、それが企業ホームページ等、事業に関連したものである場合、「うまくリニューアルすればWebマーケティング効果を得られるのに、チャンスを逃している」ということはもったいないと考えます。
「亡くなった友人が作ってくれたんです」
「自分が独立するときに友だちと一緒に悪戦苦闘して作ったんです」
「別れてしまいましたが、当時の主人が忙しい中仕事の合間を縫って作ってくれたんです」
ご友人と打ち合わせされていた時の思い出も詰まっています。
ご友人と一緒にコードを調べて楽しんで作った思い出も詰まっています。
当時は仲良く、確かに幸せだった時に「自分を思って制作してくれた」という事実が詰まっています。
ただ、一方で「自分はそれに縛られているのかもしれない」という思いも持たれています。
これらはリニューアルするかしないかの二元論で起こる葛藤です。
「ホームページをリニューアルしたときに得れるメリット」と「今あるホームページへの思い」の両方を叶える。
そう決めると意志は変化します。
「ホームページ制作の時の思い出を捨てるわけではない」
そう気づいて抵抗が外れると、それまで溜め込んでいた「リニューアルした時にやりたいこと」への思いが溢れてきます。
(初回投稿日 2024年8月29日)