オフィスビルからの帰り道、ユウキは夜風に吹かれながら、ぼんやりと過去を思い出していた。Webマーケティングの世界は、ここ10年から15年で劇的に変化した。まさに激動の時代だった。
「被リンク時代、か……」
かつては、どれだけ多くのサイトからリンクを貼られるかが、SEOの肝だった時代があった。質より量。被リンクさえ集めれば、検索エンジンの上位表示は容易だった。俺もあの頃は、とにかくリンクを貼ってもらうことに奔走した。だが、そんな時代は長くは続かなかった。
「パンダアップデート、ペンギンアップデート…あの頃くらいからか…」
Googleは、質の低いコンテンツや、不自然なリンクを排除するために、次々とアルゴリズムをアップデートしていった。パンダアップデートではコンテンツの質が重視され、ペンギンアップデートでは不正なリンクが取り締まられた。
あの頃、多くのサイトが検索順位を落とし、阿鼻叫喚の地獄絵図だった。旧世代のWebマーケターたちは、この波に乗り遅れ、次々と淘汰されていった。
俺は、その変化の波にいち早く乗った。コンテンツの質を高め、ユーザーにとって有益な情報を提供することに注力した。ブログ記事を徹底的に書き込み、SEOを意識したキーワード選定を徹底した。YouTubeで動画を配信し、視覚と聴覚に訴えかける情報発信も始めた。
「そして、現代はAIの時代……」
AIの進化は目覚ましい。AIによる自然言語処理を可能にしたバートアップデート、そしてAIの進化を踏まえた上で実施されるコアアップデート。Googleのアルゴリズムは、より人間らしい自然な言葉を理解し、ユーザーの検索意図を深く汲み取るようになった。
小手先のSEOテクニックは通用しない。本当に価値のあるコンテンツだけが、生き残れる時代になったのだ。2022年のヘルプフルコンテンツアップデート以降はそれが加速している。
俺は、常に最新の情報を追いかけ、自社のWeb戦略をアップデートし続けてきた。競合が過去の成功体験に囚われている間に、俺たちは常に一歩先を行っていた。それが、今の俺たちの成功に繋がっている。健太のような昔ながらのやり方では、この激しいWebの世界では通用しない。
「残念だったな、健太。時代は、もうお前を必要としていないんだ」
ユウキは冷たい笑みを浮かべた。彼の脳裏には、過去の成功と、未来のさらなる飛躍が鮮明に描かれていた。この町だけでなく、さらに広いフィールドで、彼のWebマーケティングが席巻する日も、そう遠くはないだろうと確信していた。
霧深き夜に見た繊月 ― 小さな会社の起死回生 低予算からのWeb集客戦略(目次)
参考