一平の話を聞いて、俺はWeb集客に対する認識を大きく改めた。その新しい視点から見ると、以前の自分がいかに表面的な部分ばかりを見ていたかがよくわかる。
「なるほど……。一平の言う通りなら、俺が昔、知り合いの社長に勧められて、相見積もりサイトでホームページ制作を頼もうとした時も、危なかったってことか?」
俺は、ふと思い出して尋ねた。当時、複数の業者から格安の提案が来て、デザイン重視で選ぼうとしていた時期があったのだ。
「ああ、健太。まさにそうだ。相見積もりサイトとか、クラウドソーシングなんかでホームページ制作を頼む場合、そこに集まっている制作業者の多くは『言われたものを作る』のが仕事だ」
一平は頷いた。
「彼らは、依頼主から『こんなデザインで、こんな機能のホームページを作ってほしい』と明確な指示があれば、その通りに作ることはできる。でもな、そのホームページが『集客に繋がるか』とか『営業ツールとして機能するか』といった、マーケティングやビジネスの視点でのアドバイスまでしてくれるケースは稀だ。つまり、集客面のことがそっちのけになる可能性が非常に高い」
俺は身震いした。確かに、当時の業者からの提案は、どれもデザインの話ばかりで、その後の集客についてはほとんど触れられていなかった。
「依頼主側も、単純に『ホームページが欲しい』とか『見た目を新しくしたい』という目的だけで依頼してしまうと、制作側も言われた通りの箱を作るだけになる。結果として、いくら見た目が良くても、Web空間に埋もれるだけの無意味なホームページが出来上がってしまうんだ」
一平の言葉は、俺が過去に経験した失敗そのものだった。あの時、一平に出会っていなければ、また同じ過ちを繰り返していたかもしれない。
「もちろん、相見積もりサイトやクラウドソーシングが全て悪いわけじゃない。例えば、すでにWeb集客の明確な計画がしっかりできていて、それに沿って制作を依頼するだけなら、問題はないと思う」
一平はそう付け加えた。
「『集客の目的はこれ。ターゲットはこれで、こういう情報を、こういう形で伝えたい。だから、こういう機能とデザインのページが必要だ』という明確なビジョンがあれば、制作は単なる実行フェーズになるからな。そういう意味で、お前の工務店の今のホームページは、俺たちがこれまでの対話で作ってきた『計画』が形になったものだ。だからこそ、今、効果が出ているんだよ」
俺は、自分のWordPressサイトを見つめた。確かに、ただのデザインの羅列ではない。そこには、一平との議論を通じて練り上げられた、具体的な集客戦略が詰まっている。Web集客は、単なる制作作業ではない。それは、戦略に基づいた、生きた営業活動なのだと、改めて強く実感した。