一平との二人三脚のWeb集客戦略は、着実に成果を上げ始めていた。俺がコツコツと積み重ねてきたWordPressサイトのコンテンツは、ただのブログ記事ではなかった。それは、一平が語った「顕在ニーズ」と「潜在ニーズ」の両方に語りかけ、そして「熟考型」の客に信頼感を与えるための、計算された情報発信だった。
その努力が、目に見える形で現れ始めた。Googleで「地域名 工務店」と検索すると、俺の工務店のWordPressサイトが、以前とは比べ物にならないほど上位に表示されるようになったのだ。さらに、「バリアフリー改修 専門」や「古民家リノベーション 事例」といった、具体的なサービス内容を示すキーワードでも、検索順位はぐんぐん向上していった。
検索からの流入が増え、それに伴ってサイト経由の問い合わせも増えていった。特に、直接的な問い合わせフォームからの依頼だけでなく、ブログ記事を読んだお客さんからの「この記事を読んで、ぜひ健太さんに相談したいと思いました」という、具体的な内容を含んだ連絡も来るようになったのは大きな変化だった。
その中には、手すりの設置やドアの交換といった、小口の案件も含まれている。これまでは、飛び込み営業や口コミでしか得られなかったような仕事が、WordPressサイト単体で受注できるようになっていたのだ。
「健太、すごいじゃない! またWebから問い合わせだって!」
美咲も、日々届く問い合わせのメールを見て、目を輝かせている。彼女が運用してくれているInstagramも、好調だった。一平のアドバイスに従い、単なる日常の投稿だけでなく、工務店の日常や、ちょっとした家の手入れのコツ、イベントの告知などを美咲ならではの温かい視点で発信し始めたのだ。すると、フォロワー数は以前の倍以上に増え、一つ一つの投稿に対する「いいね」やコメントといったエンゲージメントも飛躍的に向上した。
「この間、インスタ見てますって言ってくれた人が、直接店に来てくれたのよ!」
美咲が嬉しそうに報告してくれるたび、俺は一平の言葉の重みを再確認した。Web集客は、リスティング広告のような即効性のあるものだけでなく、WordPressサイトやInstagramといった地道な努力が、着実に実を結ぶものなのだ。
俺の工務店は、今、Web集客のしっかりとした土台が整いつつあった。それは、以前の俺には想像もできなかった、新たな可能性の扉を開き始めていた。