第二章 あかねいろのまごころ 序章|霧深き夜に見た繊月


真紀の弁当店「まごころ弁当」は、街角の小さな店舗で、夫婦二人三脚で営まれていた。店主は真紀の夫、浩二(こうじ)だが、彼の関心はもっぱら厨房の中にあった。

腕は確かで、彩り豊かでどこか懐かしい味わいの弁当は、一度食べれば忘れられないと評判だ。

だが、調理以外の、いわゆる「経営」という部分には一切ノータッチ。

仕入れも、経理も、集客も、全ては真紀の肩にかかっていた。浩二は、真紀が数字とにらめっこしたり、SNSの投稿に頭を悩ませたりしているのを横目に、黙々と出汁を取り、揚げ物を揚げる。その背中は頼もしくもあり、時に真紀の孤独感を深めることもあった。

数年前、世間を覆った外出自粛期間は、多くの飲食店を直撃した。真紀たちの店も例外ではなかった。しかし、真紀はそこで立ち止まらなかった。

厳しい状況の中、飲食店としての営業を一時的に縮小し、テイクアウトに全力を注いだのだ。

試行錯誤の末、その弁当が地域の人々に愛されるようになり、1年後には思い切った決断を下す。それまで培ってきたテイクアウトのノウハウを活かし、融資と補助金を活用して、完全に飲食店から弁当専門店へと業態を転換したのだ。

その決断は、当初は功を奏した。しかし、世間の外出自粛が落ち着き、人々が再び外食を楽しむようになるにつれ、弁当の利用数は徐々に低下し始めた。

真紀は、元の飲食店に戻すことも考えた。周囲の飲食店経営者の友人・知人に話を聞いても、客足が完全に回復しているわけではなさそうだ。一度弁当店へと舵を切った以上、今さら飲食店に戻すこともできない。そうこうしているうちに、「まごころ弁当」の売上は、月を追うごとに下降線をたどり、真紀の焦りは募る一方だった。

その上、追い打ちをかけるようにインフレが進行し、原材料や光熱費が高騰した。仕入れ値は容赦なく上がり、電気やガスの請求書を見るたびに、真紀はため息をつく。売上が落ちる一方で、固定費は増え続け、経営はひどく圧迫された。

もしかしたら、この危機感を持ち始めたのが遅すぎたのかもしれない。

せっかく根付こうとしていた新しい弁当店という新芽が、まるで降り続く豪雨に洗い流されるかのようだった。自分たちは一体どこに落ち着けば良いのか。真紀は、この苦境をどう乗り越えれば良いのかと、日々苦悶していた。

そんな八方塞がりの状況で、真紀の頭にひまりのママ友である美咲の夫、健太のことがよぎった。健太の工務店も、一時期は苦境に立たされていると美咲から聞いていた。

だが、最近の美咲の様子を見ていると、どうやら健太の工務店がWeb集客に力を入れ始めてから、目に見えて業績が上向いているようだった。

幼稚園の送り迎えで美咲と話す際、彼女の表情には以前のような暗さはなく、夫の工務店の話をする時も、どこか誇らしげだった。健太自身も、運動会などの行事で顔を合わせた程度だが、その時の表情には自信が満ちていたように思う。

健太は、自分と同じように親の事業を継ぎ、苦しい時期を乗り越えてきた。彼なら、このどうしようもない現状を理解してくれるかもしれない。

そして、もしかしたら、この苦境を打破するヒントをくれるかもしれない。健太に直接相談する機会を作ってもらうこと。

それが、真紀に残された、わずかな希望だった。

第二章 あかねいろのまごころ(第二章の目次)

霧深き夜に見た繊月 ― 小さな会社の起死回生 低予算からのWeb集客戦略(目次)

第一章 第三十六話|霧深き夜に見た繊月


著者・監修 : 株式会社ファンフェアファンファーレ

2012年創業の京都のWeb制作会社 ホームページ制作やSEO、Web集客・Webマーケティングをメインテーマにお届け。SEOやAI活用、Web以外の集客何でも来いです。中小零細企業を中心に「きちんとしたホームページ集客」を考えて、ホームページ制作や様々なWeb集客戦略を提案しています。 ホームページ制作に限ると、のべ制作数は160社(少ないって?それはそれだけ1社あたりのWeb集客施策や修正に集中してるからさ)

「第二章 あかねいろのまごころ 序章|霧深き夜に見た繊月」のカテゴリ 霧深き夜に見た繊月


ホームページ制作・カスタマイズ、Webマーケティング・SEOなどのお問い合わせ・ご依頼