第二章 あかねいろのまごころ 第三話|霧深き夜に見た繊月


健太の「強み」についての問いかけに、真紀はしばらく黙り込んでいた。自分のお店の良いところは何か。当たり前すぎて、かえって見えなくなっていたのかもしれない。やがて、彼女はゆっくりと話し始めた。

「うちの店は、数年前まで普通の飲食店だったんです。カフェみたいな感じで、ランチを出したり、夜はちょっとした洋食を提供したり。でも、ご存知の通り、世の中が大変な時期になってしまって……。それで、思い切って弁当店に業態を変えたんです。テイクアウトに力を入れたら、それが意外と好評で、その流れで完全に『まごころ弁当』として再スタートを切ったんです」

健太は頷きながら、真紀の話に耳を傾けた。彼女の店の背景は知っていたが、業態転換の具体的な経緯を聞くのは初めてだった。

「今は、日替わり弁当とか、唐揚げ弁当とか、いわゆる『普通のお弁当』のラインナップしかないんです。それが一番需要があるかなと思って」

真紀はそう言った後、少し間を置いて、控えめな口調で続けた。

「でも、実は……夫は、どんな料理でも作れるんです。昔は、フレンチレストランで修行もしていたんですよ。だから、本格的なフレンチのコース料理なんかも作れますし、和食でも中華でも、頼まれれば何でも。ただ、お弁当となると、あまり冒険しすぎても、受け入れてもらえないんじゃないかと思ってしまって……」

真紀の言葉に、健太はハッとした。フレンチレストランでの修行経験。どんな料理でも作れるという浩二の才能。それは、まさに「まごころ弁当」が他店にはない、大きな「強み」になり得るのではないか。今の「普通のお弁当」のラインナップからは想像もできない、隠れたポテンシャルがそこにあった。

「フレンチの修行経験、ですか! それはすごいですね!」

健太は思わず身を乗り出した。この情報こそ、真紀が探していた「売り」のヒントになるかもしれない。単なる「美味しい弁当屋」ではなく、その裏にある店主の確かな腕と経験をどう見せていくか。健太の頭の中で、新しいアイデアが芽生え始めていた。

第二章 あかねいろのまごころ 第二話|霧深き夜に見た繊月

第二章 あかねいろのまごころ(第二章の目次)

霧深き夜に見た繊月 ― 小さな会社の起死回生 低予算からのWeb集客戦略(目次)


著者・監修 : 株式会社ファンフェアファンファーレ

2012年創業の京都のWeb制作会社 ホームページ制作やSEO、Web集客・Webマーケティングをメインテーマにお届け。SEOやAI活用、Web以外の集客何でも来いです。中小零細企業を中心に「きちんとしたホームページ集客」を考えて、ホームページ制作や様々なWeb集客戦略を提案しています。 ホームページ制作に限ると、のべ制作数は160社(少ないって?それはそれだけ1社あたりのWeb集客施策や修正に集中してるからさ)

「第二章 あかねいろのまごころ 第三話|霧深き夜に見た繊月」のカテゴリ 霧深き夜に見た繊月


ホームページ制作・カスタマイズ、Webマーケティング・SEOなどのお問い合わせ・ご依頼