健太は、Instagramの話に食いついてきた真紀に、少し戸惑いつつも、美咲から聞いた知識を絞り出した。
「Instagramって、特にウケ狙いで、いわゆるバズを狙う必要はないと僕も思います。それよりは、見てくれる人にきちんと情報が届くように工夫することが大事なようです」
真紀は、健太の言葉に頷いた。
「ええ、私も美咲さんから少し聞いたことがあります。フォロワーが少なくても、フォロワーじゃない人にも投稿が届く可能性があるって」
「そうなんです。僕も詳しい仕組みは一平任せなんですけど、美咲に聞いた話だと、ハッシュタグを限界まで設置するとか、ちょっとしたコツがあるみたいで。基本的には、僕も一平に聞いたことを美咲に伝えて、あとは彼女任せなんですけどね」
健太は苦笑した。美咲のInstagram運用術は、いつの間にか工務店の重要な集客源になっていた。
「真紀さんのところも、特に尖ったこと、例えば奇抜な弁当とかを出す必要はないと思います。それよりは、浩二さんのフレンチの経験を活かして、例えば『ちょっと良いフレンチ弁当』を期間限定で出してみるとか……」
そこまで言って、健太は自分で言っておきながら、少し照れた。
「ああ、なんか素人くさい提案ですね、やっぱり……。でも、そういった期間限定の特別な弁当を出すことで、以前の飲食店時代のお客さんを何かしらの形で呼び戻す、という視点も良いかもしれないですね」
健太は言葉を繋いだ。
「Instagramだけでなく、SNS全体に言えることなんですけど、新規集客にも繋がりますけど、実はリピーター向けというか、常連さんとの繋がりを深める受け皿としての要素も強いですから。以前のお客さんに『あ、まごころ弁当、今こんなことしてるんだ』って知ってもらうきっかけになるかもしれません」
真紀は、健太の言葉をじっと聞いていた。新規顧客ばかりに目を向けていたが、確かに以前の飲食店時代のお客さんは、すでに「まごころ弁当」の味を知っている。
その人たちに、今の弁当店としての魅力をどう伝え直すか。
健太の言葉は、真紀の思考に新しい道筋を示してくれたようだった。







