ファンフェアファンファーレ代表取締役の桝井です。私は以前、金融機関に在籍し、金融商品を扱っていた関係から、FP技能士をはじめ、証券外務員1種や内部管理責任者などの資格を有しております。
もちろん今は、ウェブ関係のお仕事に携わっていますが、金融関係の現役を引退した関係から、直接、金融商品を販売するわけではないので、金融商品に対して客観的な判断ができるため、資産運用や金融商品の選択の仕方について、友人知人によく相談を受けることがあります。
「金融商品について客観的な意見が欲しい」
そんな思いをお持ちの方は多いのではないでしょうか?
しかしながら、金融商品を直接販売する方、金融商品のアフィリエイトサイトでは、本当に客観的な情報かどうかは、すこし不安が残ることがあると思います。
金融商品は、利率変更や法改正などが頻繁にあるため、直近の仔細なデータは把握していませんが、おおまかなポイントはお伝えすることができます。
そこで、今回は、スペシャル企画として、プライベートであまりにご質問の多い「金融商品」の中で、ひとまず「医療保険」についてお伝えしようと思います。
医療保険の本質
医療保険の本質は「リスクマネジメント」よりもキャッシュフローです。
保険は、ある意味で「リスクマネジメント」にはなりますが、どちらかというと「資金が必要なときに、必要な資金がある状態」を叶える金融商品です。
特に医療保険は、そのキャッシュフローの健全化という性質が高いことが特徴です。
医療に関わる保険商品には、医療保険単独で販売されているものと、生命保険に特約として付加されるタイプがあります。
ここでは、医療保険単独で販売されているものについて考えていきます。
それでは、実際にどういう仕組みか見ていきましょう。
特定の商品についての言及は避け、年齢性別によって保険料は異なるため、国内の代表的な「医療保険」のサンプルの保険料を、数字の端数を切って単純化した「サンプルモデル」として考えてみます。
数値としてのモデル
年齢30歳 女性
月額保険料 5000円
保障額 入院日額 5000円 手術一時金 10万円
保障期間が10年間、契約期間満了後、その都度10年単位で更新する必要のあるタイプの保険だという仮定で考えてみましょう。
まず10年間で支払う保険料の総額を算出します。ここでは節税効果を無視しています。
5000円×12ヶ月×10年=60万円
仮に終身加入かつ保険料一定で、30歳女性の平均余命である約55年間、この保険料を支払い続けた場合は、6万円×55年間=330万円になります。
(「平均余命」とは、その年齢の方が平均で後何年生きるかという統計データです。なお、「平均寿命」は、0歳の平均余命です。)
そして、次に保障額を算出します。
入院日額は、5000円ですが、保険のタイプによって、支払い可能日数の上限が設定されています。
タイプにもよりますが、概ね60日、120日というものが多いでしょう。
仮に60日入院し、手術を受けた場合の保険金額は、入院日額5000円×60日で30万円、それに加えて手術保険金10万円の計40万円です。
同一疾病の再入院の場合
同一疾病の場合は、再入院の場合も、前回の入院日数との合算で上限日数の制限がされています。
つまり、一度60日の上限に達した場合、同一疾病での再入院の場合は、入院保険金が出ないことがあります。
なお、再カウント開始の年数は保険商品によって異なります。
実質入院期間
それでは、実際にどのような疾病・傷害でどれくらいの入院期間になるのでしょうか。
厚生労働省の統計データによると、認知症や統合失調症、アルツハイマー病など脳に関係する疾病の場合は、100日を超える入院期間になりますが、全体の疾病・傷害の全年齢の平均は30日を少し超える程度です。
なお、全年齢平均は65歳以上、70歳以上の年齢層が平均を押し上げているため、0~64歳までの間の平均入院期間は、もっと下がります。
疾病傷害の種類にもよりますが、一部重度の疾病を除いて、軽微なものならば5日以内、全体で概ね20日までの入院がほとんどです。
入院期間は、あくまで概算値ですが、それでは実際に支払った保険料に対しての保険金額について考えてみましょう。
保険料:保険金額
先ほど、10年間で支払う保険料について「5000円×12ヶ月×10年=60万円」という数字をお伝えしました。
では、表現は少し変ですが、60万円を取り返すには、何日入院する必要があるのでしょうか。単純計算してみます。
支払保険料総額 60万円-手術保険金10万円=50万円
50万円÷入院日額 5000円=100日
おおまかな計算ですが、支払保険料の総額を、保険金で取り返すには、10年間のうちで、同一疾病であれば100日間入院する必要があります。
入院受療率
参考までに、「入院する確率」を少し見てみましょう。
先の厚生労働省のデータでは、30歳女性であれば、10万人分の379人程度、つまり0.38%程度が入院されています。
女性の場合は、25歳から49歳までは概ね同じような数字で、0.3%から0.4%の間くらいです。なお、50歳以上で0.5%から0.6%程度です。
男女とも全年齢層で1%程度という数字になっていますが、65歳以上の方の入院率が全体の平均値を押し上げています。
これは、65歳以上のほうが、圧倒的に医療保険の必要性のある年齢層という事になります。
医療保険の利用の仕方
ここまで見てきたように、10年間の支払保険料の総額を「取り返す」ためには、0.3%の確率にかけて(ということも変な表現ですが…)、100日間入院する必要があります。
マネー目線で見ると、ゼロサムになる確率ですら0.3%の中で、かつ、長期入院になる重度の疾病にかかる必要があります(やっはり表現が変な感じがします)。
それでは、ほとんどの場合「損」ではないか?
という感想がやってきます。
おそらくその感想通りです。
しかし例外があります。
それは、冒頭に述べた「キャッシュフローの健全化」です。
つまり、「資金が必要なときに、必要な資金がある状態」を叶えるためのリスクマネジメントです。
「資金が必要なときに、資金がないことを予防する」という意味合いがあります。
もっとも、入院にかかる医療費自体は、高額療養費支給制度がありますので、一般的な所得の方であれば、月の医療費の上限は8万円程度です(所得額によって異なりますのでご注意ください)。
この時、どういったケースであれば、医療保険を利用してリスクマネジメントするべきか。
ポイントとしては、「処分可能な流動性の高い資産があまりなく」、かつ、「負債がある場合」が特に重要になります。
難しい言葉を使ってしまいましたが、簡単には、自由に使える現金や預金などのいわゆる「貯金」があまりなく、かつ、住宅や車両などのローンなどを抱えている場合です。
そして、加えて、休業補償がない自営業の方は、さらにリスクが高まります。
「家計」レベルの経済を考えた場合、十分な現金・預金などがあれば、医療保険などでリスクをカバーする必要は特にありません。
保険金額が大きければ良いのですが、医療保険の保険金額でカバーできる範囲が限られています。
むしろ、医療保険に費やす保険料を預金で保有したほうが、疾病以外の様々なリスクに対応することができます。
しかし、それは自由に使える資金が、すでに手元にある状態の場合です。
もし仮に、自分が自営業者で、かつ、貯金がゼロで、明日から入院することになった場合を想像してみてください。
その場合に、車のローンや駐車場代、携帯電話などの固定的な出費がある場合をイメージしてみてください。
医療保険は、入院期間が確定してからの支払いになりますので、現金が戻ってくるのは入院後ですが、そういった場合に少しは安心できると思います。
医療保険の利用の仕方のポイントは、「手元に資金がない状態」の突然の疾病リスクに備えるといったイメージです。
数字だけ見ると、そんなイメージがありますが、保険という金融商品の本質はリスクマネジメントとキャッシュフローの健全化にあります。
そこで費やした保険料以上に取り返すということは、あまり本質ではないと考えています。
なぜキャッシュフローなのか?
医療保険が「キャッシュフローの健全化」であるという理由は、非常に単純明快です。
一見、急な入院時に「お金が入ってくる」というところで終わりそうですが、ある程度まとまった保険金が手元に入ってくるものの、その後にまた「保険料」を支払っていくことは変わりありません。
すると、例えば医療保険加入1年目に、手術を含む40日間入院して30万円の保険金が入ってきたとしても、その後9年かけて、トータルの10年で60万円の保険料を納めることになるからです。
もしそうなった場合、資金自体は10年間で30万円支出している計算になります。
しかしながら、手元に資金がない状態の時、まとまったお金が前倒しで一度手元に入ってくることで、資金繰りのパニックからは抜け出すことができます。
医療保険にはこういった性質があります。
むすびに 少しだけ注意点があります
今回は、細かな数字は無視して、かなり単純化したサンプルモデルで「医療保険」を考えてみました。実際は、もう少し保険料は安く、また保障内容は充実しています。
また、医療保険は、所得控除の対象になっていますので、所得税の節税効果などを考えるともう少し数値としては割のいいものになっています(だいたい一ヶ月分くらいは節税になるでしょうか)。
介護医療保険料 生命保険料控除 国税庁
最後に医療保険の注意点についてお伝えして、むすびとさせていただきます。
年満了と歳満了
更新を要する掛け捨て医療保険の「定期タイプ」には、「年満了」と「歳満了」という2パターンがあります。
更新タイプの「年満了」は、保険期間終了後も契約保険商品に定められた年齢まで、その医療保険更新できますが、「歳満了」は一般的に、保険期間中に疾病になると、更新できないことがあります。
生命保険の主契約や特約でも同じですが、保険加入の際には健康状態の告知が必要になります。直近の通院や入院履歴の告知が必要になります。
歳満了タイプの場合は、この仕組みが理由で更新できないことがありますので、加入保険タイプの確認をしておいたほうが良いかもしれません。
更新時保険料
また、医療保険の10年更新タイプは、10年間の保険料は確定していますが、更新時の保険料は、その時期の予定利率などによって変動します。
保険設計書に参考として記載されている場合がありますが、保険料が確定してはいないので注意が必要です。
さらに、例えば30歳の方であれば、40歳更新時、50歳更新時、60歳更新時までは、参考としての更新時保険料が記載されていることがありますが、実際に病気になりやすくなり、また、骨が弱って骨折などをしやすくなるのは、統計的に65歳以上になってからです。
65歳以上の一番必要なときに、保険料が高額になったり、加入できなくなったりということもよくあります(保険金支払いの確率も上がるので、高額になるのは仕方ないことですが…)。
「傷害保険」のみに変更
なお、掛け捨てタイプの医療保険では、自動更新であっても、ある年齢以上は「傷害保険」のみに変更になることがあります。
「傷害保険」とはケガの保険です。
案外「入院日額いくら」と書いてあると見落としがちですが、病気での入院の場合は、保険金が出ませんので注意が必要です。
金融商品は使い方しだい
保険をはじめとする金融商品は、誤解が多いことも事実だと思います。
月額保険料や入院日額などで、比較されがちですが、契約形態によって、取り扱いは様々です。
しかしながら無形で複雑な商品に関する知識を得ようとすると、本業そっちのけで関連書籍に食らいつく必要があるでしょう。
金融商品にはさまざまな特性があります。そしてそれらは、状況に応じて使い分ける必要があります。
家計や家族環境などが千差万別の中、商品の組み合わせを一律に設計し得ないのは当然です。しかし保険は、一般消費の中で、住宅の次に高い買い物だとよく言われます。
無形で中身が複雑でわかりにくいものですが、本質をお伝えすることができれば、注意するポイントくらいはお伝えできるのではないかと思い、今回は記事にしました。
細かな注意点も少しお伝えしましたが、一番お伝えしたかったのは、「医療保険の本質は、未来の『突然のアクシデント』が起こり、資金が必要なときに、必要な資金があるという状態を作る」ということです。
生命保険の定期保険だと1000円が1000万円になることもあります。
しかし医療保険にはそういった数値的な開きはありません。
保険金額と保険料の対比で考えると、「入院した場合、前倒しでお金が入ってくるものの、その後保険料の支払いという形で、またお金を返していく」という、金融的な性質があるというところがポイントです。
長文、最後までお読みいただきありがとうございます。
また機会があれば、他の金融商品についても何かお伝えするかもしれません。
…
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代表取締役 桝井 晶平
(初回投稿日 2016年6月29日)