広辞苑に「ホームページ」はあっても「ウェブサイト」はない

広辞苑に「ホームページ」はあっても「ウェブサイト」はない


今回、広辞苑で「ホームページ」「ウェブサイト」を調べてみました

まだまだ寒い日が続きますが、陽が暖かい季節になってきました。

読書といえば秋ですが、日差しが強くなってきたので曝書(本の虫干しです)のために書庫の整理をしております。読書ばかりしているため、沢山の本でいっぱいです。一度しか読まない本もありますが、愛読書というものがあり、それぞれ30回から100回以上読んでいるものもあります。

普通辞書辞典の類は、調べるためのものであり、広辞苑を読むということはあまり無いかもしれませんが、大江健三郎さんは広辞苑を三冊ボロボロにするまで読んで様々な単語を暗記されたそうです。十年以上前ですがそのようなことを何かで読んだことがあったので、かつてですが広辞苑を全て読みました。

しかし広辞苑も一度読んでそれで終わりになるような書物ではありません。辞書といえば岩波書店の広辞苑、小学館の大辞泉、三省堂の大辞林ですが、収録語彙数が最も多いのは、小学館の日本国語大辞典のようです。日本国語大辞典は収録項目数が50万語、私が持っている広辞苑第五版で23万語、現在の第六版で24万語が収録されています。

いまでもたまにちょろちょろ読んで、単語の印象を仔細に捉えようとすることがあります。

広辞苑で「ホームページ」「ウェブサイト」を調べてみました

そこで、事業そのものに関係するウェブ関係の用語は広辞苑にはどれほど載っているのだろうと思い調べてみることにしました。

あまりに専門的な用語はおそらく載っていないので、一般的に認知されているであろう、比較的容易な単語のみ調べてみました。

掲載画像はすべて岩波書店発行の広辞苑第五版からの引用になります。

「ホームページ」 広辞苑第五版

そこでまずはホームページから

広辞苑「ホームページ」

広辞苑「ホームページ」

「ホーム」に続く項目になるので、「―ページ」となっていますが、「ホームページ」の項目はありました。

簡単に言うと、「ホームページ」は、インターネット上のサイトの最初のページ。そしてサイトのデータそのものを総称する場合もある、ということになっています。

弊社があまり「ホームページ制作会社」ということを使わないのはこのことが理由です。

狭義には「インターネット上のサイトの最初のページ」が「ホームページ」なので、1ページで完結するのならば理解できますが、語句の誤用のままは気持ちが悪いという印象があります。

「ウェブサイト」 広辞苑第五版

次にウェブサイトです。

広辞苑「ウェブサイト」

広辞苑「ウェブサイト」

広辞苑の該当箇所に「ウェブサイト」はありませんでした。

それどころか「ウェブ」すらありません。「ウェブ」があれば、先の「ホームページ」の様に「―サイト」という表記でウェブサイトもあるかなと思いましたが、「上人(うえびと)」の次が「ウェファース」であり、ウェブという項目すらありませんでした。

広辞苑第五版第一刷が発行されたのは1998年11月11日です。まだインターネット黎明期から少し経過した程度で、編纂の時にはまだそれほど一般的には普及も指定なかったことが原因かと考えました。

以前、「世界最古のウェブサイトと初めて作ったウェブサイト」で少し触れましたが、「世界最古のウェブサイト」が復刻されたのが2013年4月で、WWWの一般公開から20年経過した頃です。ということは1993年頃からしか一般には技術公開されていなかったということになります。

広辞苑の編纂にどれほど時間がかかるのかはわかりませんが、1998年11月発行時点では、それほど「ウェブサイト」と単語は一般的ではなく、重要視されていなかったのかもしれません。

ということを考えました。

が、調べていくと続きがありました。

「www」はどうだろうと思うと、「アルファベット略語」の項目にありました。

広辞苑「www」

広辞苑「www」

そこでよく見ると

「ワールド・ワイド・ウェッブ」と表記されていました。

こんなところにヒントが隠されていました。

「Web」は「ウェッブ」

つまり、私達が近年「ウェブ」と呼んでいる「Web」は広辞苑において「ウェッブ」と表現されていました。弊社近くのガレージは未だに表記が「ガレージ」ではなく「ガレーヂ」であるように、英語を日本語カタカナで表記する際にはこういうところが混乱のもとになります。

早速ウェッブで調べてみました。

広辞苑「web ウェッブ」

広辞苑「web ウェッブ」

きちんとありました。意味は「ワールド・ワイド・ウェッブの略」となっていました。しかし「ワールド・ワイド・ウェッブ」の「ウェッブ」は一体どういう意味なのかを調べる際には、このような説明は何の意味もありません。「WWW」が頭文字をとったアルファベット略語ということは理解できますが…

これは広辞苑の第五版の項目なので第六版ではどうなっているのかわかりません。

「サイト」 広辞苑第五版

では、「ホームページ」の説明文にあった、「サイトにあるデータを総称して呼ぶ場合もある」の一文における「サイト」は収録項目として存在するのか調べてみました。

広辞苑「サイト」

広辞苑「サイト」

「サイト」は、ありました。一部引用すると「インターネットにおいて特定の情報を蓄積しているコンピュータ。またはそのコンピュータを含むシステム全体」となっており、そして後の項目にアドレスとアクセスについて少し解説されています。

②の前半部分から言えば、「サーバー」の説明のようにも見えます。後半部部分と合わさって、サーバーという機能に加えそのサーバー上に存在しアクセス可能な構成ファイルも含まれると解釈できそうです。htmlやcssを筆頭にすべてのファイルを総称して呼ぶということで大丈夫そうです。

広辞苑において「ウェブサイト」は、「ウェッブ」+「サイト」

結論になりますが、広辞苑に「ホームページ」という項目はあっても、「ウェブサイト」という項目はありませんでした。

ウェブサイトについては、「ウェッブ」+「サイト」で、「WWW(ワールド・ワイド・ウェブ)」における、アドレスを付与されアクセス可能にされたファイル群の総称ということ、と考えることができます。

ホームページはサイトの中の最初にアクセスされるページです。そしてサイトのデータを総称して呼ぶ場合もある、という説明になります。

単語としての「ホームページ」は上記のような説明になりまずが、分解不可能な単一単語ではなく単語と単語が組み合わされた熟語に近い構造のため、「ホーム」と「ページ」に分解した場合には、広辞苑における「サイトの中の最初にアクセスされるページ」が、もっとも印象としては近いと解釈します。

言語自体が、人が対象に持つ印象へのラベリングにしか過ぎないため、その人の印象次第で使用語彙は変化します。しかしながら、私は印象として最もすっきりする「ウェブサイト」を選びます。

些細な事ですが、ウェブに関する雑談でした。

(初回投稿日 2016年3月26日)

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