今回は、「ホームページのスマホ変換サービスに要注意」というタイトルで、既存ホームページをスマホ対応ホームページに変換するサービスやツールの危険性と問題点についてお伝えしようと思います。
ホームページのスマホ変換サービスで簡単にPC表示のホームページをスマホ表示用のページに変換できるというサービスのようですが…
こうした「スマホ変換サイト」にはたくさんの問題があります。
厳密にスマートフォン用デザインをホームページに適用しようと思うと細かな設定が必要になり、日本語の単語文字列の改行など、どうしても既存テンプレートの仕組みの中での基本レスポンシブのみ、つまりメディアクエリだけでの完全スマホ対応は難しい部分があったりします(問題のあるページだけclassを付与して修正すればいいのですが…)。
さて、既存ホームページをスマホ対応にする方法については、「ホームページのスマホ対応とその後の運用を考えた設計」、弊社のモバイルフレンドリー化サービスやモバイルフレンドリーの必要性については「モバイルフレンドリー」でお伝えしておりますが、以前、弊社にWordPress化をご依頼いただいたお客さまのWordPress化前のホームページを確認し、エミュレーターでスマホ表示を確認したところ、異なるURLに転送されるという仕組みでスマホ用サイトが設置されていました。
「うーん…そういうことじゃない」
本音ではそんなイメージを持ちましたが、どちらにしてもWordPress化でレスポンシブになるので、そのサイトはなくなるため「まあいいか」と思い、お客さまには特にお伝えはしませんでした。
どういった点が問題か?
それは、そのホームページのスマホ変換サービスが、独自ドメインでPC用のホームページを公開しながら、まったく異なるドメイン、しかもサブドメインでPC用ホームページとコンテンツ内容の変わらないスマートフォン用ページが公開され、そこにリダイレクトされるような形になっていたことです。
SEOに詳しい方ならすぐにピンときますよね。
「meta indexやcanonicalはどうなっているのか?」
それも確認しましたが、予測通り無指定でした。
…
そういったわけで今回は、「ホームページのスマホ変換サービスに要注意」の代表例として、こうした事例についてご紹介します。
ホームページをスマホ対応用に変換しませんか?
ホームページのWordPress化にあたり、ヒアリングをさせていただいた時に少しだけ例のスマホ用サイトについてお客さまにお伺いしました。
その発端としてまず、「ホームページをスマホ対応用に変換しませんか?」という営業の電話がかかってきたそうです。
お客さまとしては「うちはお店だし、スマートフォンを使ってお店のホームページを見る人も多いだろうし」と思い、申込んだそうです。
「現状のPC用ホームページを特に操作せずにスマホ変換サイトを表示させる」という謳い文句だったため、ホームページの表示が止まることもないしいいだろうと思い、依頼をしたそうです。
ホームページをスマートフォン対応にするのに、なぜか「月額制」
この既存ホームページのスマホ変換サービス、スマホ対応化サービスは、単発の支払いではなく、何故か月額制だったそうです。
少し怪しいですよね。
一応PC用ホームページはそのままで、スマートフォン表示用のサイトを別に作って公開するということのようでしたが、FTP接続情報などのやりとりは特になく、制作完了後に.htaccessが送られてきてそれを特定の場所にアップロードするように言われたという流れのようでした。
私たちが、そのホームページを確認させていただいたところ、PC用のメインのホームページは独自ドメインで、そしてエミュレーターで確認したところスマートフォン表示用のホームページは、別のURLで表示されていました。
スマホ変換サービスのカラクリ
このホームページのスマホ変換サービス、スマホ変換サイトを提供するサービスの内容のカラクリは次のような形です。
① PC用ホームページは特に操作しない
② PC用ホームページのコンテンツを抜き出し、業者の所有するドメインのサブドメインでスマホ用ホームページを作成する
③ リダイレクト用.htaccessを作成して、お客さまに送付し、PC用ホームページのサーバーにアップロードしてもらう
④ 結果、スマートフォンから独自ドメインのPC用ホームページにアクセスした時、業者の所有するサブドメインサイト(スマホ用サイト)に転送される
単純に別サイトを作ってそこにリダイレクトするというような形ですが、こうしたスマホ対応のやり方も、一般的には独自ドメインをベースとしてサブディレクトリか独自ドメインのサブドメインに配置します。そしてcanonicalなどでURLの正規化を行うのがスマートな方法です。
スマホ対応ホームページに変換する方法のパターン
既存のホームページをスマホ対応ホームページに変換する方法のパターンとしては大きく、既存のホームページを調整するタイプと、スマートフォン用ページを作成して、スマートフォンからのアクセス時に振り分けるというタイプに分類されます。
- 既存のホームページを調整するタイプ
- スマホ用ページを作成し、振り分けるタイプ
既存のホームページを調整してスマホ対応ホームページに変換する場合
既存のホームページを調整して、スマホ対応ホームページに変換する場合でも、分割されたカラムをどう取り扱うかという面を考えれば、サイドバーという仕組みをなくしてワンカラム化してしまうのも一つの方法ですし、もちろん左右分割を上下分割に切り替えてサイドバーを本文の下に回してしまうというレスポンシブタイプへの変更も一つの方法です。
また、スマートフォン表示では、サイドバーを無くして本文カラムを横幅いっぱいにし、トグルボタンにしてサイドバーの表示/非表示を切り替えるというのも一つの方法です。
- 2カラム、3カラムレイアウトを廃止して1カラムにしてしまう
- 左右分割を上下分割に切り替える(レスポンシブ)
- スマートフォン表示では、サイドバーを無くして本文カラムを横幅いっぱいにする
スマホ用ページを作成するタイプ
スマホ用ページを作成するタイプの場合のスマホ対応ホームページ変換は、既存コンテンツ・素材を使いながらスマホサイトを作るようなイメージです。
このタイプの変換方法では、既存のホームページとは別にページを作ることになるのですが、そのスマホ用ページをどのように運用するのかという点が問題になります。
同じドメインのサブディレクトリでページを作成するのか、サブドメインで運用するのかによっても若干の違いが出てきます。
今回の事例では、ホームページのスマホ変換サービスの内容として、全く異なるドメイン下のサブドメインでの運用でした。
この場合は、スマホ用ページを作成するタイプのホームページのスマホ対応変換の中でもたくさんの問題を抱えています。
表示は確かにスマホ対応ホームページ ではどんな問題が?
表示は確かにスマホ対応ホームページになっているので、傍から見ると特に問題が無さそうですが、SEOに詳しい方ならもう既にこの問題の論点はお気づきだと思います。
重複したコンテンツが異なるドメインで運用されている。
単純にはそこですよね。
もちろん時と場合によって、こうしたことも必要なシーンはありますが、その場合はインデックス制御やURLの正規化など相応の対策を取るのが望ましいはずです(といっても、無料ホームページでこの手の部分まで設定できるものは皆無ですので対応できない場合もありますが)。
ところが構造としては次のようになっています。
例) ページの内容は同じ
PC用 https://funfairfanfare.com/
スマホ用 http://funfairfanfare.xxxxxxsumahohennkanxxxxxx.net/
そしてスマートフォンからhttps://funfairfanfare.com/
へアクセスすると、スマホ用のhttp://funfairfanfare.xxxxxxsumahohennkanxxxxxx.net/
へと移動してしまうという形になっています。
確かに、表示上はスマートフォン版のホームページが表示されています。
では、どういった点が問題となるのでしょうか?
詳しく見ていきましょう。
コピーサイトと誤認識されSEOに問題が生じる
このケースにおいて最も問題となるのは、「コピーサイトと誤認識されSEOに問題が生じる」という点です。
若干のレイアウトの違いなどがあっても、同じ内容のページがWeb上に二つ以上存在した場合、検索エンジンはどう考えるでしょうか?
「どちらかがコピーサイトだ。これはSEOスパムかもしれない」
そう考えるのが普通でしょう。
検索エンジンでなくて生身の人間でも、同じ内容のものが異なる場所に二つ以上あった場合、「どちらかが本物で、どちらかがコピーものだ」と考えるでしょう。
その際に、「本家のコンテンツはこちらです」とか、「このページはスマートフォン表示用のために読みやすく再作成したものです」と伝えてもらえれば、
「盗作目的ではないのだな」
と思い直してもらえるはずです。
独自ドメインの内部でもこうした制御が必要な場合があります。
それがドメインをまたいでいるのならなおさらです。
そして別のドメイン、さらに言えばサブドメインにリダイレクト(転送)されているという構造になっていると誰でも混乱します。
「ページのスコアリング、どうしよう…どれを優先して検索結果に表示させるべきなのだろう…」
私が検索エンジンならそんな気持ちになります。
ホームページのスマホ対応化、スマホ変換の目的のひとつとして、スマートフォンからの検索時の検索順位向上という面を検討されていた場合であれば、こうした問題は大問題です。
こうしたスマホ変換サービスを利用した場合、最悪、スマートフォン検索時の検索順位は下落してしまうかもしれません。
スマホ変換の重複コンテンツの解決策
このホームページのスマホ変換の重複コンテンツの解決策は、そのサブドメインのスマホ用サイトを残す前提であれば、サブドメイン側の「スマホ変換後サイト」のheadを操作して、URLの正規化などを行うことくらいでしょうか。
検索エンジンに対して「理由があって、ぜんぜん違うところに同じようなページを作っていますが、オリジナルはこのURLです」と示すことで、こうした問題を適切に取り扱ってくれます。
同一ドメインであっても、レスポンシブを採用せず、別ファイルとしてスマホ用サイトを生成する場合には、こうした設定が必要になります。
独自ドメイン内部なら特にURLの振り分けは問題にならないかもしれない
「ホームページのスマホ対応とその後の運用を考えた設計」の「ホームページをスマホ対応する方法」でお伝えしていますが、Google公式ページの中のモバイルSEOの概要の中の別々のURLの取扱については次のように説明されています。
別々の URL: デバイスごとに別々のコードを配信します。この設定方法では、ユーザーのデバイスの検出を試み、HTTP リダイレクトと Vary HTTP ヘッダーを使用して適切なページにリダイレクトします。
こうしてリダイレクトする場合でも、独自ドメインの内部でスマホ用の別URLへとリダイレクトが設定されている場合であれば、おそらくデバイスごとによる転送設定なので、URLの正規化などが無くても、検索エンジンはある程度正確に読み取ってくれるかもしれません。
基本はレスポンシブやサイト内部にスマホ用ページを作成する方法に切り替える
スマホ変換の重複コンテンツの解決策の基本は、いっそレスポンシブやサイト内部にスマホ用ページを作成する方法に切り替え、別ドメインのサブドメインでのスマホ対応ページの運用を止めることです。サブドメインサイトは削除するというのがもっともスマートです。
スマホ対応ページを別ドメインで運用される=外部サイトですし、ドメインをまたいだ重複コンテンツ問題をもっともスマートに解決する方法は、外部での運用を止めることです。
そして、サイト内部の重複コンテンツ問題に対しては、通常のインデックス制御やURLの正規化で対応する、それが最も理想的な解決方法でしょう。
表面上は、確かにスマホ対応ホームページが完成し運用できていると思っていても、こうした方法を取ると別の面で様々な問題がどんどん出てきます。
その「ホームページのスマホ変換サービス」を営業してきた会社としても、ホームページのスマホ対応の需要に「ローコストで対応しよう」と考えた結果の苦肉の策なのかもしれません。
依頼者のニーズが「ホームページのスマホ対応」にだけあると、「いかに安くそれを実装するか」という問題になりがちです。
そうした価格的ニーズに対応しようと思うと、SEOやその後の運用のしやすさ(ページを追加すればまたそのページも変換してもらう必要がありますからね)などは無視せざるをえないのかもしれません。
しかしながら、例えば「ホームページのスマホ変換」など、専門性に特化していることは一見良さそうですが、ホームページ制作を含めたWebマーケティングでは、様々な側面から様々なポイントを網羅して検証しながら、全てを複合して俯瞰しながら進めていく必要があります。
時に思い切って積極的に、時に費用対効果の面で妥協しながら進めていく場合もあります。
ホームページのスマホ対応に費用をかけるのを防ぐため、無料ホームページを利用してスマートフォン用のページだけ「既存コンテンツをコピーして」作って、SEOスパム扱いになったというケースもありました。
ホームページのスマホ変換サービスを利用してスマホ変換サイトに切り替えようとされた目的は、スマートフォンからアクセスするユーザーのためであるはずです。
ホームページの閲覧性は確かに向上しますが、スマートフォンユーザーからのアクセスという面では逆にマイナス要因となってしまってはもったいない、そんなことを思います。
特に店舗などでスマートフォンユーザーからのアクセスを向上させるために、スマホ検索時の検索順位向上を狙う目的が多少なりとあったのならば本末転倒です。
Web活用で何か別のことをはじめた場合は、ゼロからスタートではなく、既存のコンテンツの処理から始める必要があるケースがあります。
それはまた次の機会にお伝えしましょう。
もしホームページのスマホ変換サービスを利用していて、少しでも疑わしい場合は、お問い合わせフォームよりお問い合わせください。スマホ用サイトの簡易チェックと修正のお見積をさせていただきます。
(初回投稿日 2017年7月24日)