広告費は「コスト」ではなく「未来の売上を買う投資」です。「来期の広告予算、どうしようか」 決算月が近づくと、多くの経営者が頭を悩ませるテーマです。 税理士に言われるがまま、あるいは昨対比でなんとなく決めてしまってはいないでしょうか。
あるいは、「Web集客には力を入れたいが、いくら使えばいいのか見当がつかない」「代理店に提案された金額が適正なのか判断できない」という不安を抱えているかもしれません。
まず、大前提となる認識を共有させてください。 会計上、広告宣伝費は「販売費及び一般管理費(販管費)」に分類され、利益を減らす「費用(コスト)」として扱われます。 しかし、経営戦略の観点から見れば、広告費は決して単なる消費コストではありません。それは「未来の売上と利益を購入するための投資」です。
株や不動産への投資と同じく、広告も「100円入れたら、いくらになって返ってくるか(ROI:投資対効果)」という視点で管理されるべきものです。 リターンが確実に見込めるのであれば、予算の上限を設けること自体がナンセンスである場合すらあります。逆に、リターンが不明確なまま投じる予算は、たとえ1円であっても浪費です。
私たち株式会社ファンフェアファンファーレは、システムとロジックに基づき、「Webで売上を作る仕組み」を構築する支援を行っています 。 その経験から断言できるのは、「多くの企業が、広告費の計算において重大な機会損失を犯しているか、あるいは致命的な浪費をしている」という事実です。
この記事は、巷に溢れる「Web広告の始め方」といった初心者向けの内容ではありません。 経営者あるいは事業責任者が、自社の財務状況と事業フェーズに合わせて、「最も利益が最大化する広告予算」を数学的に、かつ論理的に導き出すための戦略ドキュメントです。
このレポートを通じて、感情やどんぶり勘定に依存しない、堅牢な予算策定ロジックを手にしてください。
業界平均の嘘とホント なぜ「売上の5%」を信じてはいけないのか?

夜、静かなオフィスで決算書を眺めているとき、ふと胸をよぎる「違和感」がないでしょうか?
「この広告費は、本当に適正なのか? それとも、ただの浪費なのか?」
その、あなたの深層心理からの警告は、極めて正しいかもしれません。
深く息を吸い、想像してみてください。「業界平均」という言葉の裏側に隠された、その他大勢の「平均的な敗者」たちの姿を。ビジネスの世界において「平均」とは、天才と凡人、勝者と敗者を混ぜ合わせた、最も無意味な数字です。「みんなと同じ」で安心するのは、沈みゆく船に乗る者だけ。勝つための経営に、平均点など存在しません。
あなたが真に求めているのは、安直な安心感ではなく、あなたの銀行口座を確実に潤すための「勝利の数字」であるはずです。さあ、常識という名の催眠から目覚めましょう。数字の向こう側にある、冷徹で論理的な真実をお話しします。
「売上の〇%」という一般論の危険性
Webで「広告費 目安」と検索すると、様々な数字が出てきます。 「売上の5%~10%が相場」「BtoBなら売上の3%程度」「通販なら20%」などです。 これらの数字は、統計的な平均値としては間違いではありませんが、あなたの会社に当てはまるかどうかは全く別の話です。
なぜなら、この平均値には以下の企業がすべて混ざっているからです。
- 創業100年でブランド認知が完了している老舗企業(広告費は低くて済む)
- 巨額の赤字を掘ってでもシェア拡大を急ぐスタートアップ企業(売上の100%以上を広告に使うこともある)
- 下請け構造に依存しており、そもそも集客の必要がない企業
- 薄利多売で、広告費をかけると即赤字になる企業
これらを足して割った数字に、経営上の意味はあるでしょうか。 これから「下請け脱却」を目指してWeb集客を始めようとする企業や、事業の柱を太くしようとする企業が、すでに安定している企業の比率を真似れば、アクセルが踏み込めず、離陸に失敗します。 逆に、利益構造が違うのに通販会社の真似をすれば、資金ショートを起こします。
重要なのは「他社がいくら使っているか」ではなく、「自社がいくらまでなら投資でき、いくら投資すれば目標を達成できるか」という内部のロジックです。
「認知(リーチ)」と「獲得(コンバージョン)」の決定的違い
広告予算を考える際、その広告の「目的」を履き違えると、予算配分を大きく誤ります。 広告には大きく分けて2つの役割があります。
認知拡大(ブランディング): 商品や会社の名前を知ってもらうこと。
直接獲得(ダイレクトレスポンス): 問い合わせ、資料請求、購入などの行動を起こさせること。
大企業のテレビCMや看板広告の多くは「1. 認知拡大」が目的です。これは効果測定が難しく、長期間の投資体力が必要です。 一方、私たちのような中小・中堅企業がWeb集客で目指すべきは、圧倒的に「2. 直接獲得」です。
「名前を知ってもらう」ことにお金を使う余裕はありません。「売上につながるアクション」を獲得することに予算を集中させるべきです。 Webマーケティング、特にリスティング広告などの運用型広告は、この「獲得」に特化できることが最大の強みです。
不動産ポスティングに見る「ターゲティング精度」と「予算効率」
Web広告の費用対効果が高い理由は、その「除外能力」にあります。 アナログな広告手法と比較して考えてみましょう。
例えば、不動産会社が「マンション売却」のチラシを配るとします。 ある新人営業マンは、気合を入れてエリア内の全世帯に数千枚のチラシをポスティングしました。しかし、翌日になっても電話は鳴りません。 一方、ベテランの敏腕営業マンは、わずか500枚しか配りませんが、翌日には2件の問い合わせを獲得します。
参考(詳細)「無能な営業」を雇っていませんか?ホームページ制作で成果を出す人が必ず持つ 「営業スタッフ」的プランニング
この差はどこから生まれるのでしょうか。 新人は「無作為」に配っています。そこには、賃貸住まいの人もいれば、買ったばかりで売る気がない人、そもそも不動産に関心がない人も含まれます。これら「対象外」の人にチラシを届けるコスト(印刷代、人件費)は、すべて「無駄金」です。
一方、ベテランは知っています。 「築年数が10年を超え、大規模修繕が近づいているマンション」「子供が独立して部屋が余っていそうな世帯」「登記簿の変化」など、売却ニーズが高まっている場所をピンポイントで狙い撃ちしているのです。
Web集客におけるターゲティング設定は、このベテラン営業マンの脳内をシステム化したようなものです。
「今まさに『〇〇 地域名』と検索した人」(ニーズが顕在化している)
「過去に類似のサイトを閲覧した人」(関心が高い)
「特定のエリア、年齢層、性別」
これらに絞って広告を表示することで、「興味のない人」への露出コストを極限までゼロに近づけることができます。 その結果、同じ10万円の予算でも、新聞折込チラシなら反応率0.01%だったものが、Web広告なら反応率1.0%(100倍)になることも珍しくありません。
「うちは予算が少ないから」と広告を諦める経営者がいますが、逆です。
予算が限られているからこそ、無駄撃ちをしないWeb広告で、顕在層だけを狙い撃ちにする戦略が必要です。
これは「確率論」の勝負です。 計算なしに「広告は意味がない」と判断することは、ベテラン営業マンの知恵を捨て、機会損失を生み続けることと同義です。
Web集客予算を決めるための3つの重要指標(KPI)と財務的解釈

適正な広告予算を算出するために必要なのは、業界の相場情報ではなく、自社の財務データです。 以下の3つの指標を正確に把握してください。これがすべての計算の土台となります。
限界利益(Marginal Profit):事業の真の体力
会計用語が出てくると苦手意識を持つ方もいるかもしれませんが、これはシンプルかつ最も重要な概念です。
売上高:商品やサービスを売って入ってくるお金の総額。
変動費:売上に比例して増える費用(商品の仕入原価、外注費、材料費、梱包発送料、決済手数料など)。
限界利益:売上高 - 変動費。
限界利益 = 売上高 - 変動費
広告費は、この「限界利益」の中から支払われます。 そして、限界利益から広告費を引き、さらに家賃や人件費などの「固定費」を引いた残りが、最終的な「営業利益」となります。
多くの経営者が、売上規模だけで予算を考えがちですが、広告予算の源泉は「売上」ではなく「限界利益」です。 例えば、年商1億円でも、卸売業で粗利率(限界利益率)が10%なら、限界利益は1000万円しかありません。ここから固定費を払えば、広告に回せる余裕はほとんどないでしょう。 逆に、年商5000万円でも、コンサルティング業で粗利率が90%なら、限界利益は4500万円あります。こちらのほうが、圧倒的に広告投資の体力があることになります。
【重要】Web集客における変動費の考え方
Web集客を前提とする場合、従来の原価に加え、「成約1件あたりにかかる変動コスト」を厳密に見積もる必要があります。 例えば、問い合わせ対応をする営業マンへのインセンティブや、成約ごとの事務処理コストなども変動費として考慮しておくと、より精緻な予算組みが可能です。
LTV(Life Time Value:顧客生涯価値):時間の概念を取り入れる
Web集客、特に広告運用においては、単発の売上(スポット)だけで評価すると、大きなチャンスを逃すことになります。ここで重要になるのがLTV(顧客生涯価値)です。
LTVとは、「1人のお客様が、取引開始から終了までに、企業にどれだけの利益をもたらしてくれるか」という総額です。
LTV = 平均客単価 × 平均購入頻度 × 継続期間 × 粗利率
例えば、健康食品の通販や、月額制のSaaS(ソフトウェア)、税理士顧問契約などのストック型ビジネスを想像してください。 初回のお試し購入が3,000円だとします。 もし広告で1人の客を獲得するのに5,000円かかったら、初回の取引だけ見れば2,000円の赤字です。 「広告費が高すぎる!中止だ!」と判断するのは早計です。
もし、そのお客様が平均して半年間継続し、総額で30,000円支払ってくれるならどうでしょうか。 30,000円の売上に対して獲得コスト5,000円なら、十分にペイします。 このように、「いつ回収できるか」という時間の概念(キャッシュフロー)を計算に入れることで、競合他社が「赤字だ」と撤退する入札単価でも、自社だけは広告を出し続け、市場を独占することが可能になります。
これはBtoBビジネスでも同様です。 一度取引が始まれば、数年にわたってリピート発注が見込める製造業や建設業の場合、最初の1件の獲得に数十万円の広告費をかけても、長期的には莫大なプラスになります。 LTVを算出することは、「未来の利益を先取りして、現在の集客に投資する」ための根拠となります。
成約率(CVR:Conversion Rate):Webサイトの営業偏差値
どれほど広告予算をかけて、良質なアクセスを集めても、その受け皿となるWebサイト(ホームページやLP)の成約率が低ければ、すべては徒労に終わります。
アクセス数(クリック数): 店に来てくれた人の数。
成約率(CVR): 実際に買ってくれた(問い合わせてくれた)人の割合。
獲得件数 = アクセス数 × 成約率(CVR)
このCVRは、いわば「Webサイトの営業偏差値」です。 100人がサイトを見て、1人が問い合わせればCVRは1%です。もしWebサイトを改善して、CVRが2%になれば、同じ広告費で獲得できる件数は2倍になります。あるいは、顧客獲得単価(CPA)が半分になります。
適正広告費を算出する際、このCVRの数値が非常に大きな意味を持ちます。 CVRが高ければ高いほど、入札単価(クリック単価)を高く設定しても利益が出るため、競合に競り勝つことができます。 逆にCVRが低いまま広告費を投入するのは、「穴の開いたバケツに水を注ぐ」行為であり、資金を急速に枯渇させます。
株式会社ファンフェアファンファーレが、単なる広告運用だけでなく、Webサイト(LP)の制作や「コンテンツの質」にこだわる理由はここにあります 。 「境界線理論」に基づき、ターゲットに刺さる言葉選び、論理的な構成、そして信頼感を醸成するデザイン。これらが揃って初めて、CVRは最大化され、広告費の投資対効果が保証されるのです。
広告予算を決めるための基礎となる「3つの重要指標(限界利益・LTV・CVR)」について、財務的な視点から解説しました。今回はそれを踏まえ、会社の成長フェーズに応じた具体的な予算配分戦略と、電卓を叩いて算出する実践的なシミュレーションロジックについて深掘りします。
感情論や「業界の常識」を排除し、あなたの会社の数字に基づいた「勝てる予算」を導き出していきましょう。
経営フェーズ別・広告予算の配分戦略

「売上の何%」という画一的な基準が危険であることは前章でお伝えしました。適切な広告比率は、あなたの会社が今、どの成長段階(フェーズ)にいるかによって劇的に変化します。
ここでは、4つのフェーズに分けて、とるべき戦略と予算の考え方を定義します。自社がどこに当てはまるかを確認してください。
フェーズ1:立ち上げ・テスト期(データ収集への投資)
新規事業を立ち上げたばかり、あるいは初めてWeb集客に取り組む段階です。 この時期の最大の目的は、利益を出すことではなく、「データ(事実)を集めること」になります。
- どのキーワードで検索する人が購入に至るのか
- どのような訴求(キャッチコピー)が響くのか
- ホームページの成約率は想定通りか
これらは、実際に広告を出して市場に問うてみなければ分かりません。 このフェーズでは、広告費は「授業料」や「研究開発費」に近い性質を持ちます。そのため、獲得単価(CPA)が高騰し、一時的に赤字になることも許容する必要があります。
【中小企業向け】集客できないホームページは卒業!LP×リスティング広告で始める「予算内Web集客テスト」と自社サイト活用のステップ
推奨戦略
予算の上限を「痛みを感じない範囲(捨てても良いと思える金額)」に設定し、まずはアクセスを集めます。利益トントン、あるいは多少の持ち出しであっても、将来の勝ちパターンを見つけるためのデータが取れれば成功とみなします。
フェーズ2:成長・拡大期(シェア獲得への投資)
テスト期を経て、「このキーワードとこのLPの組み合わせなら、CPA〇〇円で獲得できる」という勝ちパターン(勝利の方程式)が見えた段階です。 ここはアクセルを全開に踏むタイミングです。
推奨戦略
「限界利益の範囲内」であれば、予算に上限を設けず、可能な限り広告費を投下します。 例えば、1件獲得すれば3万円の粗利が出る商品で、CPAが1万円で安定しているなら、広告費をかければかけるほど利益(残りの2万円×件数)が積み上がります。 ここで「予算がもったいない」と出し惜しむと、競合にシェアを奪われ、せっかくの機会損失となります。売上規模を一気に拡大し、市場でのポジションを確立する時期です。
フェーズ3:安定・維持期(利益最大化への投資)
ある程度の市場シェアを獲得し、顧客基盤ができてきた段階です。 ここでは、拡大よりも「効率化」にシフトします。
推奨戦略
CPAを厳しく管理し、利益率を高める運用に切り替えます。 具体的には、獲得効率の悪いキーワードを除外し、成約率の高い層だけに絞り込みます。また、新規集客だけでなく、既存顧客へのリピート施策(メルマガやLINE、リターゲティング広告)に予算を振り分け、LTV(顧客生涯価値)の最大化を目指します。 広告費率は徐々に下がり、営業利益率が向上していくのが理想的な推移です。
フェーズ4:構造改革期(下請け脱却・自律システム構築)
私たちファンフェアファンファーレが最も支援を得意とするのがこのフェーズです。 既存の事業(下請けや既存ルート)で売上はあるものの、依存体質から脱却し、自社でコントロールできる直取引を増やしたいと考えている段階です。
推奨戦略 既存事業で得た利益を、未来の防衛費として「自律型収益システム」の構築に回します。 ここでは、単に客を集めるだけでなく、「質の良い客(優良層)」を選別するフィルター機能を持ったWebサイト構築に予算を割きます。 下請け仕事で稼いだ利益の一部を、自社の「独立戦争」の軍資金としてWeb広告に投下するのです。これは将来、親会社や代理店の都合に振り回されないための、強固な防御壁となります。
【実践シミュレーション】適正広告費の算出ロジック

では、電卓を用意してください。 ここからは、具体的な数字を使って、あなたの会社の「適正広告費」を算出する手順を解説します。
ここでは、以下のモデルケースを想定します。
【モデルケース:BtoBのリフォーム・修繕工事会社】
目標:月間の新規受注を300万円増やしたい
平均客単価:100万円(つまり月3件の成約が必要)
粗利率(限界利益率):30%(1件あたり30万円の粗利)
ホームページの成約率(CVR):1%(100アクセスで1件問い合わせ)
成約率(営業):20%(問い合わせ5件につき1件成約)
ステップ1:許容CPA(顧客獲得単価)を逆算する
まず、「1件の成約を獲得するために、いくらまで払えるか」を決めます。 1件の成約で、粗利は30万円出ます。 この30万円をすべて広告費に使えば利益はゼロです。いくら利益を残したいかを経営判断します。
仮に、「粗利の半分(15万円)は営業利益として確保したい」とします。 そうすると、残りの15万円が、1件の成約にかけることができる上限の広告費(許容CPA)となります。
許容CPA(成約ベース) = 粗利30万円 – 確保したい利益15万円 = 15万円
ステップ2:必要な「問い合わせ単価(CPA)」を出す
Web広告で直接「成約」まで完了することは稀で、通常は「問い合わせ(リード)」獲得がゴールになります。 営業の成約率が20%(5件に1件決まる)なので、1件の成約を得るためには5件の問い合わせが必要です。
成約1件に15万円使えるということは、問い合わせ1件あたりに使える金額は以下のようになります。
許容CPA(問い合わせベース) = 成約許容CPA 15万円 ÷ 5件 = 3万円
つまり、「問い合わせ1件を3万円以内で獲得できれば、目標の利益は確保できる」という明確な基準ができました。
ステップ3:全体の広告予算を算出する
目標は「月間3件の成約」でした。 そのためには、問い合わせが「3件 × 5倍 = 15件」必要です。
月間広告予算 = 問い合わせ必要件数 15件 × 許容CPA 3万円 = 45万円
これが、この会社における論理的な「適正広告予算」です。 月商300万円のアップに対して、広告費45万円。広告費率は15%となります。 粗利率30%の事業において、広告費率15%を投下し、残り15%(45万円)の営業利益を手元に残す。これは非常に健全で現実的な数字です。
ステップ4:クリック単価(CPC)の相場と照らし合わせる
最後に、この予算で実際にWeb広告が回せるかを確認します。 ホームページのCVR(問い合わせ率)は1%でした。 問い合わせを1件獲得するには、100回のクリック(アクセス)が必要です。
問い合わせ1件に3万円使えるなら、1クリックあたりに払える上限単価(上限CPC)はいくらでしょうか。
上限CPC = 許容CPA 3万円 × CVR 1% = 300円
ここでGoogle広告などの管理画面を見て、狙いたいキーワード(例:「外壁塗装 地域名」など)のクリック単価相場を確認します。 もし相場が「1クリック1,000円」だった場合、上限の300円では全く広告が表示されません。 この場合、「計算上の予算(45万円)」では戦えないことが分かります。
ここで諦めるのではなく、以下のいずれかの対策をとります。
CVRを上げる: ホームページを改善し、CVRを1%から3%にする。(→上限CPCは900円まで許容できるようになる)
LTVを見直す: リピート発注や紹介を含めた生涯価値で計算し、許容CPAを引き上げる。
ターゲットを絞る: 「外壁塗装」のようなビッグワードではなく、競合が少ないニッチなキーワードを狙い、安いクリック単価で集客する。
このように、論理的に計算することで、「予算が足りない」「サイト改善が必要」「戦略を変えるべき」という具体的なアクションが見えてきます。 なんとなく30万円で始めるのとは、解像度が全く違うことがお分かりいただけるはずです。
広告費を無駄にしないための「防御壁」としてのホームページ
広告費の計算において、最も重要な変数が「CVR(成約率)」であることは前述の通りです。 CVRが1%のサイトと2%のサイトでは、広告費の効率が2倍違います。 月間100万円広告を使う企業なら、CVRが倍になれば、同じ予算で売上が倍になるか、あるいは50万円のコスト削減になります。
しかし、多くの企業が「広告の運用設定」ばかりに気を取られ、肝心の「飛び先(ランディングページ)」の改善を怠っています。
穴の開いたバケツ理論
あなたのホームページは、水をしっかり溜められるバケツでしょうか。それとも穴だらけでしょうか。 広告費を使ってアクセスを集めるのは、蛇口から水を注ぐ行為です。バケツに穴(魅力のないオファー、分かりにくい文章、スマホで見づらいデザイン、信頼性の欠如)が開いていれば、水はどんどん漏れていきます。 これでは、いくら広告予算を最適化しても意味がありません。
フィルターとしての「境界線理論」
私たちが提唱する「境界線理論」に基づくWeb集客では、ホームページは単なるカタログではありません。 それは「顧客を選別するフィルター」です。
広告をクリックしてやってきたユーザーに対し、 「私たちは安売り競争はしません。品質を重視する方のみご依頼ください」 「下請け仕事ではなく、対等なパートナーシップを築ける方と仕事をします」 というメッセージ(哲学)を明確に伝えます。
これによって、
価格だけで比較する「質の悪い客」
理不尽な要求をする「クレーマー予備軍」
これらを問い合わせの段階で排除(離脱)させます。 一見、CVRが下がるように思えるかもしれませんが、結果として「成約率が高く、利益率も高い優良顧客」だけが残ります。 営業マンが相見積もりで疲弊することなく、高い確率で受注できる状態を作ることこそが、真の「広告費の最適化」です。
無駄な客への対応コスト(人件費・精神的コスト)を削減することも、広義の意味でのマーケティング効率の向上です。 広告予算を組む際は、この「フィルター機能を持ったLP制作費」も初期投資として考慮に入れるべきです。
ここまでは、広告予算算出の「数学的ロジック」と、フェーズごとの「戦略」について解説してきました。 最終回となる今回は、より実践的な「代理店との付き合い方(インハウス管理術)」、「業界別ケーススタディ」、そして経営者が持つべき「覚悟と投資の関係」についてお話しします。
計算機で弾き出した数字を、現実の経営でどう運用し、利益に変えていくのか。その「実行論」に踏み込みます。
代理店任せにせずインハウス(自社)で数字を把握する重要性
広告運用を外部の代理店に委託すること自体は悪いことではありません。餅は餅屋です。しかし、「予算管理と判断」まで丸投げにすることは、経営放棄に等しい行為です。
代理店の手数料モデルと「利益相反」のリスク
多くのWeb広告代理店は、「広告費の20%」を手数料として受け取るビジネスモデルを採用しています。 ここに、構造的な「利益相反」が潜んでいることを理解する必要があります。
あなたの目的: 少ない広告費で、最大限の売上(利益)を上げたい。
代理店の構造: 広告費が増えれば増えるほど、手数料(売上)が増える。
悪質な代理店の場合、CPA(獲得単価)を下げて効率化する提案よりも、「もっと予算を増やして露出を広げましょう」という提案をしがちです。 もちろん、誠実な代理店もたくさん存在しますが、構造上、彼らに「予算削減」のインセンティブが働きにくいことは事実です。
だからこそ、経営者あるいは社内の担当者が、Part 2で解説した「許容CPA」や「限界利益」を正確に把握し、「これ以上のCPAになったら広告を止める」「この数字が出ている間は予算無制限で踏む」という「指令」を出さなければなりません。
社内にノウハウを蓄積する(インハウス化への布石)
完全に自社で運用(インハウス化)する必要はありませんが、少なくとも「レポートを読み解く力」は社内に必要です。 毎月送られてくるレポートの「表示回数」や「クリック率」だけを眺めて、「よくわからないけど、お任せします」と言っていませんか。
見るべきポイントはただ一つ、「投資対効果(ROAS・ROI)」です。 「今月使った30万円が、粗利ベースでいくらになって返ってきたか」 この質問に即答できない状態は危険です。
株式会社ファンフェアファンファーレのコンサルティングでは、将来的な自走(インハウス化)も見据え、ブラックボックスになりがちな広告運用の数字を透明化し、経営者が判断できる状態を作ることをゴールの一つとしています。
経営者の「感情」ではなく「論理」で判断するシステム
Web集客で失敗する最大の要因は、運用テクニックの拙さではなく、経営者の「感情的なブレ」です。
「今月は本業の売上が悪いから、広告費を削ろう」(→新規獲得が止まり、来月さらに苦しくなる)
「なんとなく効果が出ていない気がするから止めよう」(→データが蓄積されず、またゼロからやり直し)
Web集客は「自動販売機」のようなシステムです。 電気が通っていなければ動きません。 「CPAが許容範囲内であれば、どんなに環境が変わろうと広告を出し続ける」という「鉄の掟(ルール)」を決め、システムとして淡々と運用し続けることが、安定した収益を生む唯一の道です。 この論理的な運用こそが、既存の収益構造や経営者の精神状態に左右されない「自律型収益システム」のコアポイントとなります。
業界別・ケーススタディ
ここでは、具体的な業種を例に、適正な広告予算配分と戦略のモデルケースを紹介します。
ケースA:製造業・建設業(高単価BtoB・下請け脱却狙い)
【特徴】
客単価:数百万~数千万円
ターゲット:技術力を求める特定企業の担当者
課題:既存ルート(商社・元請け)への依存度が高い
【戦略と予算配分】 このケースでは、「CPA(獲得単価)が高くても気にしない」ことが鍵です。 1件の受注で数百万円の粗利が出るなら、1件の問い合わせ獲得に10万円、20万円かかっても痛くも痒くもありません。 むしろ、予算をケチって機会損失する方がリスクです。
「ニッチな技術キーワード(例:『〇〇加工 精密 公差』)」で検索結果を独占するために、競合が躊躇するような高いクリック単価で入札します。 同時に、ホームページには「技術の権威性」を示すコンテンツ(事例、設備紹介、技術コラム)を重厚に配置し、安売りを求める客を排除します。 予算の比重は、広告費そのものよりも、信頼を勝ち取るための「コンテンツ制作・サイト構築」に厚く配分すべきです。
ケースB:士業・コンサルタント・高額無形商材
【特徴】
客単価:顧問契約などでLTVが高い
ターゲット:経営者、富裕層
課題:「人」への信頼が全て。比較検討が長い。
【戦略と予算配分】 ここでは「指名検索」を増やす戦略をとります。 一般的なビッグワード(例:「税理士 地域名」)での広告出稿も行いますが、それ以上に、SNSやブログ、動画などで「代表者の哲学」や「解決策の独自性」を発信し、そのコンテンツ経由のリマーケティング広告に予算を割きます。
「あなたにお願いしたい」という指名客を獲得するため、広告費の一部を「動画制作」や「高品質な記事執筆」に回します。動画は、経営者の分身として24時間語り続け、論理的な防御壁として機能します。
ケースC:地域密着型店舗・クリニック
【特徴】
客単価:数千円~数万円(リピート前提)
ターゲット:商圏内の居住者
課題:商圏が決まっているため、検索数に上限がある。
【戦略と予算配分】 商圏内の検索ボリュームには限りがあるため、リスティング広告の予算は自然と上限(頭打ち)が来ます。 余った予算は、無理に広告に突っ込むのではなく、「MEO対策(Googleマップ順位向上)」や「リピート施策(LINE公式アカウントの運用ツール導入など)」に回します。 「一度来た客を逃さない」ためのシステム投資に予算を配分することで、LTVを最大化します。
Web集客は「自動販売機」を設置するようなもの
長くなりましたが、最後にWeb集客の本質についてお伝えします。 Webで売上を作る仕組み(LP+広告運用)を構築することは、「人通りの多いWebという場所に、自社の自動販売機を設置すること」に似ています。
ホームページ・LP制作費 = 自動販売機の「本体購入・設置費用」
広告費 = 自動販売機を動かすための「電気代」
商品・サービス = 中に入っている「ジュース」
多くの人が、「電気代(広告費)」をケチろうとして、コンセントを抜いたり入れたりします。それではジュースは冷えず、誰も買いません。 あるいは、「本体(ホームページ)」にお金をかけず、ボロボロの段ボール箱のようなサイトに広告でお客さんを集めます。それでは怪しんで誰もお金を入れません。
最適な予算配分とは、経営者の「覚悟」を数字に置き換えたもの
「売上の何%が正解か」 この問いに対する私の最終的な答えはこうです。
「あなたが、どれくらい本気で、今の現状(下請け構造や依存体質)から抜け出したいと思っているか。その『覚悟の量』が、そのまま適正予算になる」
もし、現状維持でいいなら、広告費はゼロで構いません。 しかし、「親族にコントロールされる経営から脱却したい」「理不尽な値下げ要求をする元請けと縁を切りたい」「社員と家族を守るための強固な城(システム)を築きたい」と願うなら、それ相応の投資が必要です。
それは単なるコストではなく、「自由へのチケット代」です。
私たちが提供できること
株式会社ファンフェアファンファーレは、きれいなホームページを作って終わり、ではありません。 あなたの会社の財務状況を分析し、限界利益とLTVを算出し、「どの市場で、誰に向けて、いくらの予算を投じれば、最短で自律型収益システムが完成するか」という設計図を描くところから始めます。
構造的な痛みに気づいている方
論理で経営をコントロールしたい方
「平均」ではなく「自社の正解」を知りたい方
まずは、あなたの会社の「本当の体力(限界利益)」と「眠っている資産(技術・強み)」を診断させてください。 Webという武器を使って、あなたのビジネスを「待つ経営」から「攻める経営」へと転換させましょう。
株式会社ファンフェアファンファーレ Webで売上を作る仕組み構築・Webマーケティング支援 自律型収益システム構築プログラム Web集客 企業の売上を向上させる仕組みづくり







