第一章 第十七話|霧深き夜に見た繊月


一平にホームページのリニューアルを依頼してからというもの、俺の心はどこか落ち着かなかった。これまでの人生で、こんなにも大きな決断をしたことはない。父の工務店を継いだ時も、それは自然な流れで、自分の意志というよりは、周りの期待に応えるようなものだった。

父はどうやって仕事を獲得してきたのだろうか? 俺が物心ついた頃には、いつも父は忙しそうにしていた。電話が鳴りっぱなしで、時には夜遅くまで現場に出ていた。インターネットもSNSもない時代に、どうやってあれだけの仕事をこなしていたのか。

きっと、一つ一つの仕事を丁寧にこなし、地域の人々との信頼関係を築き上げてきたのだろう。

今の俺がやろうとしているWeb集客とは、全く異なる泥臭いやり方だ。だが、その根底にある「真面目さ」や「信頼」は、何一つ変わらない。父への尊敬の念が、ふつふつと湧き上がってきた。

そんな折、娘のひまりがしきりにどこかへ行きたいと言い出した。

最近は仕事のことで頭がいっぱいで、娘との時間がおろそかになっていたと反省した。

妻にも声をかけ、家族三人で久しぶりに小旅行に出かけることにした。近場の温泉街だ。

宿に着き、浴衣に着替えて散策に出かける。娘は綿菓子をねだり、妻はスマートフォンのカメラを構えて、しきりに周りの景色を撮っている。

「ねえ、健太。これ、インスタ映えしそうじゃない? 後で投稿しよっか」

妻の美咲が嬉しそうに言うのを聞いて、俺は少しだけ複雑な気持ちになった。確かに、Instagramでの発信も大事だ。だが、今は、この家族の時間を大切にしたい。

「そうだな。でも、今はいいだろ。せっかくの旅行なんだから、スマホはしまって、ゆっくり景色を眺めようぜ」

俺がそう諭すと、美咲は一瞬きょとんとした顔をしたが、やがて小さく頷き、スマホをカバンにしまった。

その晩、家族三人で貸し切り露天風呂に入った。湯けむりの向こうに広がる夜空を見上げながら、俺は久しぶりに心からリラックスできた。娘がはしゃぎながら湯船に浸かり、妻がその姿を優しく見守っている。

仕事の悩みも、Web集客のプレッシャーも、この瞬間だけは忘れられた。父が築き上げてきた工務店を守ること。そして、この家族を幸せにすること。それが、今の俺にとって最も大切なことだと、改めて強く感じた。

翌日、土産物屋を巡り、地元の食材を使った料理を堪能した。娘の屈託のない笑顔、妻の穏やかな横顔。かけがえのない家族の時間を満喫した小旅行だった。

帰りの車の中で美咲がぽつりと言った。

「健太、なんだか最近、変わったね」

俺は、ハンドルを握ったまま、少し照れくさそうに笑った。

「そうか? 別に変わってねえよ」

「ううん、変わった。前よりも、なんだか頼もしくなった気がする」

美咲の言葉に、俺は少しだけ胸を張れた気がした。一平との出会い、Web集客への挑戦。それは、俺を経営者として、そして一人の人間として、少しずつ成長させているのかもしれない。新たなホームページの完成が、今から楽しみで仕方なかった。

第一章 第十八話|霧深き夜に見た繊月

第一章 第十六話|霧深き夜に見た繊月

霧深き夜に見た繊月 ― 小さな会社の起死回生 低予算からのWeb集客戦略(目次)


著者・監修 : 株式会社ファンフェアファンファーレ

2012年創業の京都のWeb制作会社 ホームページ制作やSEO、Web集客・Webマーケティングをメインテーマにお届け。SEOやAI活用、Web以外の集客何でも来いです。中小零細企業を中心に「きちんとしたホームページ集客」を考えて、ホームページ制作や様々なWeb集客戦略を提案しています。 ホームページ制作に限ると、のべ制作数は160社(少ないって?それはそれだけ1社あたりのWeb集客施策や修正に集中してるからさ)

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