「頼む、一平! どうすればいいんだ!?」
俺の切羽詰まった声に、一平は落ち着いた声で答えた。
「大丈夫だ、健太。まずは原因を特定する。Search Consoleのデータを見る限り、これは外部からの悪質な攻撃、いわゆるネガティブSEOの一種だろう。お前のサイトの評価を意図的に下げようとしているんだ」
一平の言葉に、俺は怒りがこみ上げてきた。せっかく順調に進み始めたWeb集客を、邪魔しようとする奴がいるとは。
「そんな卑怯な真似を……。でも、どうやってそんなことするんだ?」
「低品質なサイトから大量のリンクを送りつけて、検索エンジンに『このサイトはスパム行為をしている』と誤解させようとするんだ。だが、安心しろ。対策はある」
一平は、俺の質問に答えながら、パソコンの画面を操作し始めた。
「厄介なのは、こういった悪質なリンク元は、数日で消えることが多いってことだ。痕跡を残さないように、頻繁にURLを変えたり、サイト自体を閉鎖したりする」
まるでモグラ叩きのような作業だ。しかし、一平は諦めることなく、冷静に、そして迅速に作業を進めていく。Search Consoleのデータを詳細に分析し、不審なリンク元を一つ一つ特定していくのだ。その集中力は、まさにプロのそれだった。
数日後、オンライン会議で一平は俺に報告した。
「健太、特定できたぞ。やはり、特定のグループが裏で手を引いているようだ。何度も手口を変えてきて、追跡は困難を極めたが、何とか主要なリンク元を割り出すことができた」
俺は、その言葉に安堵した。
「すごいな、一平! で、どうするんだ? そいつらに直接乗り込むのか!?」
俺が拳を握りしめると、一平は呆れたように笑った。
「馬鹿なことを言うな。そんなことをしても意味がない。Webの世界には、Webのやり方がある。対処法は『リンクの否認』だ」
「リンクの否認?」
聞き慣れない言葉に、俺は首を傾げた。
「ああ。Googleに、『これらのリンクは、自分の意思とは関係なく貼られた悪質なものなので、評価対象から除外してください』と申請するんだ。そうすれば、悪質なリンクからの影響を受けなくなる」
一平は、そう言って、Googleのウェブマスターツールでリンク否認ツールを操作する画面を見せてくれた。大量のURLが羅列されたリストに、一平は淡々と作業を進めていく。
「これで、しばらく様子を見れば、検索表示されているページの異常な数も元に戻るはずだ。お前のサイトの評価が不当に下がることもなくなる」
一平の言葉に、俺は心底ホッとした。これでまた一つ、大きな壁を乗り越えることができた。Web集客は、ただ集客するだけでなく、こういった見えない敵との戦いでもあるのだと痛感した。だが、一平という心強い相棒がいれば、どんな困難も乗り越えられる。俺は、改めてそう確信した。
霧深き夜に見た繊月 ― 小さな会社の起死回生 低予算からのWeb集客戦略(目次)
参考