夜の帳が下りたオフィスで、俺は高層ビルの窓からきらめく町の光を見下ろしていた。俺の名前はユウキ。元ホストという異色の経歴を持つが、今ではこの地域のWeb集客を牽引する、と自負している。健太と同じ業界。俺の会社は、ここ数年で破竹の勢いで成長を遂げた。
「ハハッ、健太のところも、ようやく重い腰を上げたか」
パソコンの画面には、健太の工務店のSNSアカウントが表示されている。
素人感丸出しの投稿。正直、笑えてくる。俺がInstagramに本腰を入れ始めた頃の、あの手探りの時代を思い出させる。
だが、俺はそこから徹底的に研究し、実践してきた。公式サイトのコンテンツマーケティングにSEO対策。そして、SNSでの情報発信。それら全てが、今の俺の成功を支えている。
「この町は、俺が制する」
グラスに入ったバーボンを一口煽る。冷たい液体が喉を通り過ぎるたびに、俺の野望が熱を帯びていく。健太とは高校の同級生。あの頃から、あいつは真面目なだけの朴訥とした男だった。俺とは正反対だ。だが、その真面目さが、今となっては足枷になっている。
「昔ながらのやり方じゃ、もう通用しないんだよ、健太」
俺はニヤリと笑った。ウェブの世界は、常に進化している。昨日までの常識が、今日には通用しなくなる。そんなスピード感の中で、のんびり構えているようじゃ、置いていかれるだけだ。
「顧客は、新しい情報を求めている。そして、手軽さを求めている。俺たちは、そのニーズに応えてきただけだ」
俺の会社は、顧客の悩みに対してブログ記事で具体的な解決策を提示し、YouTubeで施工事例を動画で紹介する。SNSでは、日々の現場の様子や、スタッフの素顔を公開し、親近感を抱かせる。そうやって、顧客との距離を縮め、信頼を構築してきた。
「この町のシェアは、もうほとんど俺たちのものだ。健太の工務店がいくら足掻いたところで、どうにもならないさ」
俺はパソコンの画面を閉じ、椅子にもたれかかった。
かつての同級生が、今、必死にもがいている。その姿は、俺には滑稽に映る。
だが、それもまた、このビジネスの世界の厳しさだ。俺は、これからも立ち止まることなく、走り続ける。この町の、いや、この国のWeb集客のトップに立つために。俺の野望は、まだ始まったばかりだ。