今回は、「SEOは単なる特定のキーワードでの検索上位表示によるWebマーケティング方法ではない」というタイトルで、非常に単純なトランザクションクエリでの検索結果上位表示によるWebマーケティングからの脱却と、ホームページのSEO自体がそういった目的のためだけではないという点についてお伝えしていきます。
未だにSEOやSEO対策というと、わかりやすいキーワードで検索結果上位に表示させることで、ニーズが顕在化したユーザーの囲い込みを行おうという風潮があります。
しかし、その大半は被リンクによるものであり、「少しはまともかなぁ」と思ったら、「リンクプログラムではなく、丁寧にリンク設置します」という「結局ブラックハットSEOか…」なんてことがよくあります。
ホームページのWebマーケティング効果自体は、たしかにSEOなどによるWeb集客力がひとつのキーポイントとはなりますが、どんな内容にするかや、どう見せるかといった点については、あまり語られていません。
あまり語られていないが故に、Webマーケティングと言えば、わかりやすーいSEOキーワード、つまり、「ホームページ制作 京都」なんてなキーワードでの集客ばかりに目がいってしまうのでしょう。
そこで、今回は、どんな内容にするか、どう見せるか、といった点はさておいて、「SEO=特定キーワードでの検索結果上位表示によるWebマーケティング」という概念を破壊するための内容にしようと思います。
特定SEOキーワードへの執着
SEO会社のページを見ると「特定キーワード5つまで」といったような謳い文句で、おそらく外部リンクであろうSEOサービスの案内がなされています(根本的にそうしたリンク販売を禁止いているはずの検索エンジン側がそうしたSEO会社の広告をリスティング表示していることはさておきましょう)。
こうした特定のキーワードは、確かにニーズが顕在化している「検索ユーザー」とのマッチングを叶えるものであるため、わかりやすいWebマーケティング方法として旧来から着目されています。
しかし、そうしたものが根本原則としてありながらも、検索ユーザーそのものの成熟という点が案外見落とされているのではないでしょうか?
メディアの成熟と視聴者の成熟
有名な話ですが、黒澤明監督の作品は、様々な点で映画というものの性質を変えてしまいました。
舞台の延長という視点から、当事者目線へと言った視点もそうですが、何よりも特定のシーンで特定の情動を呼び起こさせるという方法を採った点が革新的でした。
ある特定の情景で、特定の情動を再現できるという方法が生み出されました。
その仕組みのもっとも注目すべきポイントは、見る側への訓練とも言うべき視聴者側の成熟です。
メディアの手法が発達したということもありますが、それよりも見る側に変化がもたらされたという方が着目すべき点ではないでしょうか。
これをインターネットに置き換えると、一般ユーザーへの普及という意味でのWebの黎明期から考えても既に20年以上経過しています。日進月歩のWebの世界ではどんどん新しい仕組みが導入され、新しいユーザー体験がたくさんもたらされています。
SEOに限定すれば、より高度な思考が要求され、どんどん敷居は高くなっていますが、ユーザー側の傾向としては、より抽象的でシンプルなものへと注意が向いていく傾向にあります。
需要側と供給側の意識のズレ、マッチングの乖離
これは、需要側と供給側の意識のズレ、マッチングの乖離を意味しています。
例えば、ユーザー間のコミュニケーションひとつとっても、テキストベースのコミュニケーションから、画像や動画などを多用するSNSへとシフトしています。そしてコミュニケーション行動としても、テキストでやり取りしていたものから、動画共有サイトにおけるコメント等へ、そして更に進んで、単純な画像に「『いいね』を押す」など、どんどんシンプルなコミュニケーションへとシフトしていっています。
一方、供給側の方法は、Webマーケティングで考えれば、依然としてSEOやリスティングといったダイレクトなWebマーケティングから若干幅が広がり、コンテンツマーケティングやソーシャル活用などが着目されました。
それらはシンプル化しているというよりも逆に方向性が多方向になっているため複雑化し、さらに一つ一つの方法論の中でも、勝ち組と負け組が現れるほど、それ相応のスキルと思考が要求されるようになりました。
SEOとユーザーの成長
そこで、本題のSEOによる特定のキーワードで検索結果上位表示によるWebマーケティングについてですが、SEOによる検索順位という概念や検索表示回数というものはほとんど一定であっても、実際に検索しているユーザー自体が10年前と今では性質が異なるのではないかという点に着目してみようと思います。
広く考えれば、情報ソースとしてマスメディアとの競合も考えられますが、メディアサイトやソーシャルネットワーク、マスメディアのコンテンツを利用したWebコンテンツ(そう言うので稼ごうとするってどうなんでしょう…)など、情報のシャワーの中にいるユーザーは、既に10年前、20年前のユーザーよりも進化しているはずです。
「Webで再検索」他のサイトへと移動するといった確率
その進化自体の質については触れませんが、少なくとも無料コンテンツに慣れ、どこにもかしこにも情報があるという状況に慣れたユーザーとしては、訪れたサイトが優秀なサイトであっても、昔のように深く読み込むこともなく、他のサイトへと移動するといった確率もぐんと高まっていると予測されます。
根本的に特定のSEOキーワードで検索結果1位だとしても、ユーザーが2位、3位と比較しないということもあまり考えられません。
同時に、何かの広告を見てそうしたサービスに興味関心が湧いたとしても、一発でその広告からコンバージョンに至らずに、ユーザーはその広告からキーワードを抽出して、Webで再検索をかけ、よりよく吟味するということも考えられます。
そうした中で、SEOにこだわり、特定のトランザクションクエリでの検索結果上位表示に躍起になるのはWebマーケティング効果を考えると非常にロスが多いのではないでしょうか?
SEOはコンテンツを活かすために意識する
私たちも、よく「SEOは検索エンジン最適化である」という旨をお伝えさせていただいています。
SEO会社の広告やSEOに強いという謳い文句のホームページ制作会社などのコンテンツでは、「特定のキーワードで上位に表示されることが成功の秘訣だ」といったことが書かれています。
そのためには相互リンクや外部リンクなど、どんな方法をとっても良いということのようです。
一方、SEOに本当に詳しく、優秀な方々は「良いコンテンツを作ってそれを検索エンジンに正しく伝えること」がSEOだとおっしゃいます。
私たちは圧倒的に後者を支持しています。前者の場合は、例えばSEO会社やホームページ制作会社で、特定のわかりやすい検索キーワードで上位に表示されていても、顧客のサイトから自社サイトにリンクを設置しているだけだというお粗末なことがよくあります。
つまり顧客のサイトを踏み台にして、自社サイトにリンクを集め、また、そうして高めたSEOパワーを「制作実績」としてリンクを設置し、また顧客サイトに還元していくというような方法です。
それでお互いの利害が一致しているのだから、特にこれ以上触れませんが、SEOの本質を考えるならば、外部との関連性に依存せずに「独り立ち」していることが理想的だと考えています。
どうしてこんなことになるのかと言うと、そこには特定キーワードへの執着があるからです。
わかりやすいトランザクションクエリの成功法則
特定キーワードへの執着が生まれてしまうのは、おそらくわかりやすいトランザクションクエリ、つまり、「サービス名+地域名」での検索集客・Webマーケティングの成功法則しか見えていないからです。
しかし先ほどもお伝えしたように、わかりやすいトランザクションクエリは確かにユーザーのニーズが顕在化しているため、「手っ取り早い」面は確かなものの、ニーズが顕在化しているからこそ、複数の比較対象を吟味するという面を見逃すわけにはいきません。
基本はコンテンツが先でSEOは後
SEOのイメージはSEO会社などの広告によって、検索結果上位表示によるWebマーケティングだということになっていますが、本来は、まずコンテンツがあって、それを検索エンジンに最適化するというものがSEO、つまり検索エンジン最適化です。
だからこそ基本はコンテンツが先でSEOは後になります。もちろん後のSEOを意図して、先にコンテンツの案を検討するということもありますが、基本的には「コンテンツを作ってみて、出方を見てSEOを施そう」というような流れになります。
大規模サイトでは、全体的なSEOの設定によって、アクセス数が変動しますから、本当に単純にSEOなのかもしれません。ただ、それでも先にコンテンツが何も無ければSEOは施しようがありません。
SEO業務としてできることと言えば、そうしたコンテンツを活かすために、サイト全体やページ情報を検索エンジンに最適化することです。ホームページ制作で言えば、どのようなコンテンツを作っても、ある程度ページ内容が正確に検索エンジンに伝わるというテンプレートづくりや、ページ間の関係性、階層の提示などです。
検索上位表示によるWebマーケティング
Webマーケティングには、本当にたくさんの方法があります。その本質を考えてみると、ひとまずWebを利用して、新しい売上を作る、もしくは売上のきっかけを作るというようなことがWebマーケティングになります。
ところで、こうしたトランザクションクエリでの検索上位表示によるWebマーケティングは、幅が狭いと思いませんか?
「喉が渇いたから何か飲みたい」
という人に対して、「うちはコーラしか置いてないよ」といっているような感覚になります。
例えば紅茶であれば、単純に「紅茶」と言ってしまっても良いのですが、「ウバ茶」とか「アッサム」でも紅茶であるはずです。
その状況で、紅茶というキーワードにだけ執着して検索上位表示によるWebマーケティングを行っても、競合も強いですし、「紅茶」だけで検索する人しかカバーする事ができません。
例えばマニアックですが「FTGFOP」という言葉があります。紅茶のグレードです。
それで検索する人はかなりマニアックですが、紅茶に対する関心を持っているはずです。
そういう人との出会いのためには、「紅茶」というわかりやすいキーワードよりも「FTGFOP」というキーワードが必要になるでしょう。
紅茶というわかりやすいキーワードでの検索順位争いから脱却して、「FTGFOP」を調べている人と出会う、そして次は「TGFOP」といったように幅を広げるほうが建設的ではないでしょうか?
そうして、細かなSEOキーワードでコンテンツを積み上げると結果的に「紅茶」でも検索上位になります。
簡単なことじゃないですか。
SEOの常識が認知されるほど優位性が無くなる
これはどんな分野でも同じことなのですが、先行者利益を得ていたとしても、周りがそれと同じ水準にまで高まってくると、先に得ていた優位性はなくなり、また別の優位性が必要になります。
例えば、コンピュータが珍しい時代で、誰より早くコンピュータを導入し、会計処理を行っていた場合、経理担当の人件費が削減されるため、企業としての体力は競合よりも高いという優位性を得たとします。
しかし、どこの企業も同じようにコンピュータを導入し、会計に利用しだした場合は、そうした相対的なコスト負担での優位性は無くなります。
それと同じように、SEOに関して言えば、Googleのアルゴリズム変更によって、特定のSEOの方法論がそれほど効果が無くなって…という場合もあります。
さらに、単純にSEOの知識や常識が広まり、競合との間での優位性が無くなって、結果検索順位が低下するということもあります。
具体的なSEO方法はすぐに見つかる
ブログなどが登場してからは、Web上の情報発信の速度が飛躍的に高まりました。
こうした状況下において、具体的なSEO方法はすぐに見つかるでしょう。
知人に聞いたのですが、SEOに関するセミナーなどでは、よく「具体的なSEOを教えてくれない」とか「良いコンテンツを作れという以外にアドバイスはないのか?」というセミナー参加者の声などがあるそうです(聞いた話ですから真相は知りません)。
おそらく登壇している方としては、そうした具体的なSEO方法は既に認知されていて、改めて話すのも野暮だと思われているのかもしれません。
「具体的なSEO」を知りたがる方はもしかすると、「SEOのプロだけが知っている必殺技があるのではないか?」という期待をされているのかもしれません。
しかしながら、もう一度原点から考えてみると、「SEOは検索エンジン最適化です」という一言に尽きます。
SEOの中でも近視眼的なWebマーケティング
あくまでSEOも一つの方法論であって、その利用目的の頂点にあるのは、「アクセス数」などではなく、実際の「問い合わせ」や「資料請求」などであるはずです。
だからこそ、Webマーケティング方法として、特定のSEOキーワードに固執するというのももったいないと思っています。様々なコンテンツページへのSEO、そしてホームページ全体のSEOという視点も必要だと考えます。
ユーザーの常識も変化し、検索ユーザー側の成長や検索行動そのものの目的も変化していっています。
もしかすると、検索ユーザーそのものの成長によって、検索流入からのコンバージョンよりも、Facebook広告など直接の検索を行わないユーザーからのコンバージョンレートが高まっている傾向にあるのかもしれません。しかしそれもまた時代とともに変化していきます。
改善すべきはページコンテンツの中身や根本的なWeb集客方法
特定のトランザクションクエリの検索上位表示にこだわっても、もしかするともう非常に情報リテラシーの高い玄人しか検索していないという可能性があり、改善すべきは、ページコンテンツの中身だったり、根本的なWeb集客方法だったりということも想定することができます。
SEOはWebマーケティング方法のひとつですが、少なくともSEOによる「特定検索キーワード」での検索結果上位表示によるWebマーケティングという方法論に固執することは、近視眼的だと言えるでしょう。
(初回投稿日 2017年6月16日)