先日は御縁がありまして、同志社大学のビジネスプランコンテストの2次審査の審査員を務めさせていただきました。
同志社大学リエゾンオフィスさんと同志社ベンチャートレイン(DVT)さんが共同で行う、同志社大学のビジネスプランコンテスト「New Island Contest」は、2004年から開催されており、今回で13回目だそうです。
ビジネスプランコンテストと言えば、友人が龍谷大学のプレゼン龍の実行委員をしていたこともあり、何かと馴染みがあります。なんだかんだで、様々な方面から新規事業の相談は多いのですが、大学生のビジネスプランを伺うのは興味深いです(本格的にビジネスプランに関する大学生のプレゼンテーションを受けるのは2年ぶりくらいでしょうか)。
後半には、同志社大学ビジコン「NIC2016」本戦の様子を掲載しています。
同志社大学寒梅館
というわけで、同志社大学寒梅館へ。何年ぶりでしょうか。
何年ぶりかと思えば、そう言えば去年くらいに、一階のカフェレストランHamac de Paradis(アマーク・ド・パラディ)さんにカレーを食べに来たことを思い出しました。そうそう久しぶりでは無かったようです(入り口に着いて思い出しました)。
〒602-0023 京都府京都市上京区御所八幡町10
同志社大学ビジネスプランコンテスト会場
さて、会場へ向かいましょう。
ワクワクしてきました。
さっそく審査会場へ。
ビジネスプランコンテスト
さて、本題のビジネスプランコンテストですが、12月に本戦があるため、内容はシークレットです。
たくさんのプランナーの方々が熱心にプレゼンテーションされていました。
想像していたよりもレベルが高かったです。
新規性・独自性や実現可能性、収益性等様々な観点からポイント制で評価させていただきました。
もっと質疑応答でたくさんお伺いしたかったのですが、時間の関係上難しかったのが少し残念でしたが、面白いプランがたくさんありました。
私たちが同じ年齢の頃のビジネスプランコンテストは、「新規性・独自性」ばかりが重視され、アイデアだけの奇想天外なプランが多かったのですが、時代は進んでいます。既存の企業も見習うべき着眼点、かつ、実現可能性も高いものが多かったような印象があります。
全てのプレゼンテーションが終わり、みなさまからこんな質問があったので、せっかくなので記載しようと思います。
「審査員の方はビジネスプランのどんなところを重視してプランのクオリティを判断されますか?」
トゥールミン・ロジックと社会のニーズ
今回は、論理としての主張の正しさと、ビジネスプランとして社会にニーズがあるかという点をポイントとしました。
トゥールミン・ロジックを簡単にだけ説明いたしますと、これはデータ、ワラント、クレームの三つで成り立っています。
データはそのまま情報ですね。そしてワラントはデータの根拠やそれを元にした理屈、そしてクレームは「苦情」ではなく、主張という意味です。
「おいおい本題と関係あるのか?」となる方もいらっしゃるかもしれませんが、あくまで私は今回、このトゥールミン・ロジックを大切にして考えました。
プレゼンテーションの際、ニーズや市場規模など、参考になるデータを示されている場合がありましたが、そのデータ自体が論拠として使えるのか、テータとクレームを結びつけるのに穴はないか、という点を重視しました。つまりワラントです。
ある市場の規模と最終的なクレームであるビジネスプランを結びつける際に、どこかで根拠としてのズレはないかをポイントとしました。
他の審査員の方が質問されたもので次のようなものがありました。
「実際に何処かの業者さんとお会いしたりしましたか?」
これは、まさに、「希望的観測」から「信憑性のある論拠」へとシフトさせるために必要な要素です。
そしてこれは、次の「社会のニーズ」と共通するポイントになります。
社会のニーズと消費者余剰
社会のニーズといっても、広く社会全体をテーマにしているかということが問題ではありません。
特定の誰かが、本当にそのニーズを持っているか、そして、そのサービスの対価として、金銭を支払っても自分にとってはプラスだと思えるのかどうかという点です(消費者余剰ですね)。
素晴らしいアイデアであっても、行政などの一方的な無償サービスと異なり「ビジネス」であるからには、ユーザーが「対価を支払ってでも自分にとってはプラスだ」と思えなければいけません。
自分たちの世代のビジネスプランコンテストでは、「独創性」みたいなものが着目されていましたが、その独創性は、誰かの役に立たなければ意味のないうわ言になってしまいます。
また、構造的には素晴らしくても、サービスの質を上げた場合は、基本的にその分だけコストがかかります。そしてコストの分だけ、単価が上がります。そうすると値段とサービス内容を見比べた場合、割が合わなくなることもよくあります。この点が実現可能性に関連してきます。
ただ、一般的な事業計画の相談ではなく、ビジネスプランコンテストですので、「新規性・独自性」は欲しいところです。既存ビジネスと同じようなもので実現可能性の高いものを提示するだけでは、面白みはありません。
これらをふまえた上で、社会のニーズを捉える際にも、なるべく「希望的観測」から「信憑性のある論拠」へとシフトさせるために、実態調査等があると説得力があると思います。
もちろん、非常に新規性のあるものは、実態調査は難しいかもしれませんが、新規性のあるものでも、「現在、あるニーズを満たしているものの代替手段や代替物」である場合がほとんどだと思います(パソコンのオフィスソフトでも、それまではみんな手書きで同じようなことをやっていました)。
その場合はそれら「現在、あるニーズを満たしているもの」自体の需要を探ってみると、ワラントがしっかりしたものになるのではないでしょうか。
どうしてそういったサービスが無いのか
今ある既存サービスの中で、少し手を加えれば実現可能であるはずなのに、どうしてそういったサービスが無いのか、そういった点を考えて問題点を浮かび上がらせるとより良いかもしれません。
ひとまず「みんな気付いていない」ということは置いておいて、それは、コスト面で割に合わなかったり、根本的なニーズがあまりなく市場規模がかなり小さいためだったりと、様々な面が浮かび上がってくると思います。そうして問題点を把握できたなら、そしてそれを解決する案が思い浮かんだなら、プランはより洗練されたものになっていくでしょう。
プランナーのみなさま、審査員、同志社大学リエゾンオフィスさん、同志社ベンチャートレインのみなさま、貴重な経験をありがとうございました。
New Island Contest 2016
同志社大学のビジネスプランコンテスト「New Island Contest 2016」の本戦は2016年12月3日です。
同志社大学ビジネスプランコンテスト New Island Contest 2016
2016年12月3日(土) 13:10〜18:05
定員
先着200名
参加者が200名に達した時点で、お申し込みは締め切られます
会場
同志社大学 良心館305
〒602-8580 京都府京都市 上京区今出川通烏丸東入
ビジネスプランコンテスト概要
“同志社大学生なら参加しておきたいイベントNo.1”
来る12月3日。 同志社大学 No.1の学生がついに決定します!
厳しい選考を勝ち抜いた同志社大学を代表するTOP5組の学生による
卓越したプレゼンテーションであなたを魅了します。
コンテストの7つの特色
- 同志社大学の公式なイベントである
- 同志社大学を代表するTOP5組の学生によるプレゼンテーション
- ゲストスピーカーによる基調講演
- 社会の第一線でご活躍されている社長の方々による本格的審査
- ミスキャンパス同志社2016 ファイナリストによる総合司会
- 寒梅館アマークを貸し切っての懇親会(参加費:1000円)
- 参加型コンテストであり、あなたもコンテストの主役である
ビジネスプランコンテスト 当日プログラム
13:10〜13:15 開会宣言
13:15〜13:20 審査委員長 挨拶(リエゾン所長)
13:20〜13:25 審査委員紹介 スポンサー紹介
13:25〜13:30 ルール説明
13:30〜13:55 講演 村田晃嗣 様
13:55〜14:20 プランナー①
14:20〜14:45 プランナー②
14;55〜15:10 プランナー③
15:10〜15:25 休憩
15:25〜15:50 講演 染谷大 様
15:50〜16:15 プランナー④
16:15〜16:40 プランナー⑤
16:40〜16:50 オーディエンス投票
16:50〜17:05 休憩
17:05〜17:30 講演 岡田陵太 様
17:30〜18:00 表彰式
18:00〜18:05 閉会宣言
18:30〜 懇親会 @寒梅館 アマーク ド パラディ
(現時点での予定であり変更の可能性があります)
参加お申込み方法
以下のフォームよりお申込ください。
New Island Contest 2016
申込・問い合わせ先
同志社ベンチャートレイン(DVT)
第13回 同志社大学ビジネスプランコンテスト(New Island Contest 2016)
(初回投稿日 2016年11月8日)
同志社大学ビジコン「NIC2016」本戦へ 京都市上京区
同志社大学ビジネスプランコンテスト「New Island Contest(NIC)2016」本戦が2016年12月3日(土)に同志社大学今出川キャンパスの良心館で開催されました。先日2次審査の審査員を務めさせていただいたこともあり来賓での観戦でした。
この「New Island Contest」は、同志社大学リエゾンオフィスさんと同志社ベンチャートレイン(DVT)さんが共同で行う、ビジネスプランコンテストです。グランプリには30万円の賞金が出ます。
さて、良心館に向かいましょう。
同志社大学の良心館は、京都市営地下鉄今出川駅直結です(この時初めて知りました)。ビジネスプランコンテスト本戦は良心館3階です。
同志社大学ビジネスプランコンテスト 本戦へ
二次審査のあとにビジネスプランのブラッシュアップ講座があったようです。
さらに洗練されたものになっているであろうワクワクが止まりません。最終審査結果が楽しみです。
司会は、ミスキャンパス同志社2016 グランプリの青木 美奈実さん。
基調講演には村田晃嗣教授。非常に印象に残りました。
まさかここで中江兆民さんの三酔人経綸問答が出てくるとは…
さて、今回は審査員ではありません(内容は一度聞いていますからね)。
本戦へ通過した5組の中からグランプリをはじめ、New Island、オーディエンス賞などなどが選ばれます。
今回のテーマは「信念」
今回のテーマは「信念」です。
基調講演で村田教授がお話されていましたが、信念は無条件に良いものではありませんし、独善に陥りやすいため注意が必要です。
もちろん熱意さえあればよいのかというとそうでもありません。お話にあったとおり、もし信念があるならば、それは準備や調査といったことを怠らないはずだからです。
「信念」というコトバは、漢字を見ると少し面白いですね。
「人に言う今の心」ですから、あくまで現段階の思いを「人に宣言する」くらいの意味合いなのではないでしょうか。
それならば、時系列的な段階が変われば、コトバも変わるはずです。
変わらなかったら、元の信念すら出てきませんからね。信念がなかった段階から、信念が出てきた、そういった変化があったように、その信念の内容も変わっていくのではないでしょうか。
New Island Contest グランプリは「クロマキー」さん
第十三回同志社大学ビジネスプランコンテストのグランプリは「クロマキー」さんの「錦鯉海外輸出代行サービス」でした。
最終審査・グランプリ発表の後、寒梅館のアマーク ド パラディさんで懇親会があったのですが、そこでオーディエンスだった大学生の方々より、「どうしてクロマキーさんだったんでしょう?」という声がたくさんありました。
ということで、ここから先は、もちろん私の意見です。
クロマキーさんのビジネスプランは、伝統産業である錦鯉を海外に輸出する際の代行サービスです。
販売はWeb、扱うサービスはそれほど特異なものでもありません。
確かにぱっと見ただけでは、「2016年」の最先端のプランとは思えないかもしれません。
しかしビジネスプランの詳細の最大のポイントは、希望的観測や机上の空論ではない点です。単純にプランの一貫性と、強みの裏付けとなる「ワラント」がしっかりしていた点です。
一番のポイントは、収益性がありながら、大企業等が競合となった場合の「それでも勝てる強み」があるかどうか、という点です。
どんなに良いプランでも、同じことを後発の企業が、大きな資本力で対抗してきた場合に、シェアを奪われる可能性というものは常に内在しています。
クロマキーさんは、既に錦鯉の生産者の方とお話していたり、現状での一般的な販売方法や輸出に関する検疫等の有無、「日本の錦鯉のブランド力」などを調査し、自社の強みや競合に対する独自性など、細かな点までしっかりとプランを作成されていました。その上で、伝統産業を守ることに貢献できるというところがプラスです。
もし単純に、錦鯉を「儲けの道具」としか考えていなかったら…という面はありました。
生き物を扱うため、個人的には、生き物を商材として扱われる点が、あまり好ましくはありませんでしたが、飼い主のいなくなった錦鯉を引き取り、それをかわいがって育ててくれるコレクターへと繋ぐ、という点もプランに組み込まれていました。
そこに金銭のやり取りがあったとしても、それは居場所のなくなった錦鯉を救うことになるのではないでしょうか。
ともすれば信念とは、「事業で成功する」という熱い思いと捉えられると思いますが、「錦鯉海外輸出代行サービス」を形にする、という思いがあるならば、「気持ち」だけであるとか、「思いつき」だけではない、実際の調査など、実現可能性の模索が始まる思います。
今回のグランプリは、その信念を「起業」といった形にする前にはなりますが、きちんと信念に沿った行動をされました。
その点が高く評価されたのだと思います。
プランナーのみなさま、同志社大学リエゾンオフィス、同志社ベンチャートレインのみなさま、協賛企業・団体のみなさま、非常に有意義な時間をありがとうございました。
(初回投稿日 2016年12月6日)