コウモリの飛ぶ洞窟 旧岩美鉱山へ 鳥取県岩美町

コウモリの飛ぶ洞窟 旧岩美鉱山へ 鳥取県岩美町


鳥取県岩美郡岩美町まで足を伸ばし、コウモリの飛ぶ洞窟旧岩美鉱山の中へ行ってきました。日本最古の銅山とされる「荒金鉱山(あらかねこうざん)」です。岩美町は京都から進むと国道9号線をまっすぐ、鳥取市の手前になります(なお今年も「神話の里白うさぎ名誉駅長 うさぎの命には挨拶に行きました)。「因幡の白うさぎ」 白兎神社と白兎海岸 鳥取県鳥取市

さて、この旧岩美鉱山はすごいんです。

今までRPGゲームの世界や映画の中だけだと思っていたような、コウモリの飛ぶ「ダンジョン」のような洞窟が中にあるんです(本当にコウモリが住んでいます)。

岩美鉱山は、銅や鉄がメインですが、金、銀、鉛、亜鉛などを算出していた鉱山で、時は大宝、西暦701年から703年に銅床が発見され和銅(西暦708年から714年)には元明天皇に銅が献上されていたとの記録があるそうです。別のデータでは698年に銅鉱が文武天皇に献上されていたとのことですので、どちらにしても794年の平安遷都よりもずいぶん前の話です。

この岩美鉱山は明治22年から本格的に採掘が行われていたようですが、昭和18年の鳥取大地震によって、品質が低下してしまい、その影響で昭和33年に採取鉱掘は終了し、昭和46年に閉山しました

しかしながら、今なお銅鉱の採掘によって流れ出した強酸性の水や重金属の鉱害が近隣環境に悪影響を及ぼすため、「岩美町鉱害防止協会」さんが坑廃水の中和処理を行われています

カドミウムや水銀のような有害金属ではないのですが、銅や鉄が含まれる水が排出され、pH値も3.3と強酸性です。この水が自然の川などに流れると、魚は生きていくことができず、農作物も枯れてしまうため、アルカリ性の消石灰で中和処理をされています。

こういった事業を手がけられている岩美町鉱害防止協会さんに事前連絡することで、旧岩美鉱山の中、旧採掘現場の一部を見学することができます。タモリ倶楽部のようなワクワクです。なお、旧岩美鉱山は現在、山陰海岸ジオパークのスポットのひとつとして紹介されています。

山陰海岸ジオパーク 旧岩美鉱山の案内

山陰海岸ジオパーク 旧岩美鉱山の案内

旧岩美鉱山 220mの坑内へ

旧岩美鉱山 坑内入口

旧岩美鉱山 坑内入口

普段は閉ざされている旧岩美鉱山の坑内入口です。

さあ扉が開きました。

本当は何キロも道が続いていて、隣の山の中にまで行けるそうですが、鉱山採掘時代のままの状態のため、安全面の問題により奥に進めるのは220メートルまで。ヘルメットをお借りして突入です。

旧岩美鉱山 坑内入口 (2)

旧岩美鉱山 坑内入口 (2)

外の気温は30度以上でしたが、坑内に入ってすぐに気温は約14度に。長袖が必要です。

この道は、平成に入ってからキレイに整備されたため安全ですが、少し天井が低く、男性であれば十中八九頭を打ちます(私は2、3回打ちました)。

岩美町鉱害防止協会職員さんに案内されて進む

岩美町鉱害防止協会職員さんに案内されて進む

若干腰をかがめながら進みます。

坑道の真ん中には、銅や鉄を含む坑廃水が流れています。そういうわけでこの水は、若干鉄の匂いがします。

この坑廃水が中和処理の対象の水なのですが、成分が他のもの(土などでしょうか)と混じって沈殿しています。

坑廃水の銅や鉄が沈殿して塊に

坑廃水の銅や鉄が沈殿して塊に

この塊は触っても大丈夫だそうです。水の中にあるときは若干固め、掬い出すとすこしふわふわしています。この沈殿物も定期的に掻き出し作業が必要なようです。

さて、ダンジョンは目前、洞窟へと進みましょう。

コンクリートの坑内から洞窟へ 旧岩美鉱山

コンクリートの坑内から洞窟へ 旧岩美鉱山

コンクリートの先は、洞窟です。

ここからが本気の洞窟 旧採掘現場へ

コウモリの飛ぶ洞窟 旧岩美鉱山へ 鳥取県岩美町

この洞窟が実際に銅の採掘が行われていた当時のままの姿の坑内です。

この場所は閉山当時のままになっているため、安全面の問題で少し先にまでにしか進めません。

職員の方に、「坑廃水で魚は死んでしまうとのことですが、この強酸性の環境で生き物は住んでいるんですか?」と聞くと

「コオロギやコウモリが住んでいるようです」と教えていただきました。

と、その瞬間、本当にコウモリが飛んできました(写真は撮れませんでした)。

銅がつらら状に 旧岩美鉱山

銅がつらら状に 旧岩美鉱山

普通の鍾乳洞は、石灰岩がメインですが、この場所ではおそらく銅を含んでいるであろう「つらら状のもの」たくさんありました。色が特殊です。

坑道の洞窟の壁 アップ

坑道の洞窟の壁 アップ

旧岩美鉱山 坑道の洞窟

旧岩美鉱山 坑道の洞窟

この場所はほとんど坑道の入口ですが、この洞窟が何キロも続いているそうです。

旧岩美鉱山 坑内の洞窟 その先何キロも続く

旧岩美鉱山 坑内の洞窟 その先何キロも続く

このポイントでも二つのルートに分かれていて、水量の多い時に調整ができるようにと仕切が設置されている側にも別ルートの洞窟が続いています。

旧岩美鉱山 坑道 第二ルート

旧岩美鉱山 坑道 第二ルート

その先また複数のルートに枝分かれするそうです。まさにダンジョンですね(「ゴールド」というわけではないですが、実際に十円玉に使われている「銅」もあることですし…)。

一般的に洞窟の中には洞穴生物(どうけつせいぶつ)という特殊な生き物がいます。目がなかったりといった洞窟環境に合わせて進化した生き物です。一般的には鍾乳洞などにいるようですが、この旧岩美鉱山は、さらに強酸性の環境ですので、もしかしたら普通の洞穴生物とは違ったすごい生き物が住んでいるかもしれません(そうなると未知のモンスターですね)。

旧岩美鉱山坑廃水処理事業

旧岩美鉱山坑廃水処理事業

旧岩美鉱山坑廃水処理事業

コウモリの飛ぶ洞窟、旧岩美鉱山坑内を見学した後は、旧岩美鉱山坑廃水処理事業の見学です。

先ほどの旧岩美鉱山坑内から流れ出る坑廃水を消石灰で中和処理して綺麗な水にして川に流すという過程を見学させていただきました。

旧岩美鉱山の坑廃水 鳥取県岩美町

旧岩美鉱山の坑廃水 鳥取県岩美町

ひとまず空気に触れて酸化した銅と鉄を含む水。つまりサビ水ですね。これを強アルカリ性の消石灰で中性にしながら、消石灰と重金属を固めて塊にし、水と分離させるというものです。

坑廃水の原水貯水槽

坑廃水の原水貯水槽

まずは原水貯水槽に坑廃水を貯めて、その後に消石灰と混ぜ、沈殿分離させて脱水するというプロセスのようです。

旧岩美鉱山坑廃水処理事業2

旧岩美鉱山坑廃水処理事業2

旧岩美鉱山坑廃水処理事業 消石灰

旧岩美鉱山坑廃水処理事業 消石灰

旧岩美鉱山坑廃水処理事業3

旧岩美鉱山坑廃水処理事業3

こちらで沈殿分離されます。

旧岩美鉱山坑廃水処理 沈殿分離

旧岩美鉱山坑廃水処理 沈殿分離

旧岩美鉱山坑廃水処理 脱水機

旧岩美鉱山坑廃水処理 脱水機

こちらが最終処理の脱水機です。

脱水された消石灰と銅と鉄は、塊になりフェロニッケル(鉄とニッケルの合金)の原料となるそうです。

脱水ケーキ フェロニッケルの原料に

脱水ケーキ フェロニッケルの原料に

こうした旧岩美鉱山坑廃水処理事業の処理過程の見学や旧岩美鉱山坑内の見学には、岩美町鉱害防止協会さんへの事前連絡が必要です。

坑内見学を含め、お世話になりました。

また、さやえんどうを持参してお伺いします!

岩美町鉱害防止協会

岩美町鉱害防止協会

岩美町鉱害防止協会

〒681-0055 鳥取県岩美郡岩美町荒金720-4

TEL 0857-72-0426

旧岩美鉱山鉱害防止事業

アクセス

国道9号線(山陰道)から鳥取県道197号線に進み、山道を進んで荒金神社の手前くらいに旧岩美鉱山、岩美町鉱害防止協会さんがあります。

鳥取県道197号線から少しそれる形で管理道路があり、道路入口には、「関係者以外立入禁止」といったような文言があるため、一瞬迷いそうになりますが、そのまま構内を進んでいくと岩美町鉱害防止協会さんの「管理棟」にたどり着きます。

なお、山間部のため、携帯電話の電波は繋がりにくいです。

(初回投稿日 2017年7月11日)

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